経営学
第1回
企業の存続条件
企業の固有の存続条件(=バーナードの存続条件)
報酬の分配(能率)
・各成員に報酬を与えてその欲求を従属し,彼らの経営組織 への参加を確保すること
→他の企業に参加したら得られる報酬
<当該企業から提供される報酬
・各構成員での利害の調整という局面
→当該企業から提供される報酬
<構成員が適正と考えている報酬
⇒提供できる報酬量に限界あり
↓
彼らの欲求を調整
↓
彼らの満足のバランスを確保
報酬の生産(有効性)
・広義の経営戦略の形成
@
企業目標の形成
↓具体化
A
狭義の経営戦略の形成
↓具体化→@実行手順の規定
↓ A結果予想
B
経営計画の作成
・経営組織の形成・運用による経営戦略の奥行
⇒組織・動機づけ
*
有効性(effectiveness)
組織の有効性とは、組織の共通目的を達成する能力ないし達成の程度を意味する
*
能率(efficiency)
組織の能率とは、その体系の均衡を維持するに足るだけの有効な誘因を成員に提供する能力、ないしは、誘因を分配された成員の満足の度合いを意味する
社会的制約条件の充足
企業に期待された役割の遂行
社会的制約条件
⇒社会的責任論
企業目標
狭義の企業目標(本社)⇒企業戦略
・
事業領域に関する記述含む
・
業績水準に関する記述含む
事業目標(事業部)⇒競争戦略
個々の事業領域ごとの目標
職能別(機能別)目標⇒職能別戦略
職能分野別の目標
*企業目標
企業目標とは、企業が報酬を生産するために財・サービスの生産・販売活動を行う際に、それらを体系的に展開するための究極の拠り所となるものである
経営理念と企業目標の関係
共通点
企業の進むべき方向を指し示すもの
相違点
経営理念
単なる価値観の表明でもよい
企業目標
事業領域や業績水準など具体的内容を含んだもの
海外生産のタイプと日本企業の国際化の推移
水平的国際化
同一種類の製品の生産を、様々な国で展開するもの
垂直的国際化
本国の製品メーカーから見た場合、原材料や部品の生産、販売などを国際的に展開していくもの
多角的国際化
国ごとに異なる事業を展開し、相互に製品を輸入ないし輸入しあうもの
日本企業の海外生産
1970年代
→垂直的国際化が中心、進出先は発展途上国が中心
→日本は、天然資源が乏しい,低賃金労働をもとめて
1980年代前半
→垂直的国際化が中心、進出先は先進国中心
→輸入規制がなされ、仕方なし
1980年代中頃以降
→水平的国際化中心、円高が急速に進行
海外生産がコスト面で有利
→コスト優位の追求,ニーズに迅速に対応するため
日本的経営論
人事労務面における特徴
終身雇用制
→企業と従業員の関係が長期化
年功序列制
→上司と部下の関係が固定的
⇒職場組織が生活集団的色彩をおびる
→集団主義
内部マネジメントにおける特徴
@
経営組織面
・職務・権限の柔軟性
↓
能力のある人に多くの仕事
能力のない人には少ない仕事
↓
全体で業績を高めようと考えている
・連結ピン型の組織
⇒各単位組織において目標・方針等が集団で討議決定
A
経営戦略面
従来
職能別組織が中心
@新たな事業領域を探索する必要性↑
A欧米の先進諸国に追いつくために、「良いものを安く」提供することに重点がおかれた
近年
企業戦略の重要性↑
↓
不況下において、リストラクチャリングの重要性↑
環境の不確実性と変革へのリーダーシップ
1.構造的不確実性
画期的な技術の出現、規制緩和
↓
市場の大幅な変動
↓
全社レベルで対応すべき
↓
トップ
↓
包括的プロセス
トップによる基本戦略の形成
↓
包括的インフラの形成(包括的組織革新)
基本戦略を適切に実行できるような活性化された下位組織の形成
↓
ミドル(下位組織)による具体的戦略の形成、実行
2.競争的不確実性
消費者ニーズの変化
↓
市場の若干の変動
↓
市場へのスピーディーな対応が必要
↓
ミドル
↓
創発的プロセス
創発的インフラの形成(創発的組織革新)
創発的プロセスを次々に生み出すような下位組織の形成
@
権限をミドルに十分に委譲する
A
フラットな組織構造にする
B
組織の規模を極力スリム化する
C
部門間の関係や各人の役割に柔軟性をもたせる
↓
ミドルによる具体的戦略の形成・実行
↓
トップによる追認ないし全社戦略への格上げ
製品ライフサイクル仮説
導入期
@ どの製品が消費者に受け入れられるかを模索する段階
→競争的不確実性
↓
ミドル主導の創発的プロセス
A @について、ある程度見込みがつき、一気に設備の拡大に踏み切る段階
→構造的不確実性
↓
トップ主導の包括的プロセス
成長期
→需要の急激な増加
↓
構造的不確実性
↓
トップ主導の包括的プロセス
成熟期
→需要増加が頭打ち
↓
競争激化
↓
競争的不確実性
↓
ミドル主導の創発的プロセス
衰退期
→需要の急激な減少
↓
構造的不確実性
↓
トップ主導の包括的プロセス
スパイラル・マネジメント
@
ある企業が複数の事業を持っている場合には、包括ループ、創発ループのうち、それぞれの事業に適したループを用いるべきである
A
たとえ単一の事業の場合でも、ライフサイクル上の位置が変化した場合には、それに対応して適用するループを変えるべきである
B
創発ループが存在しないか、または不活発な場合には、以下のような経路を取ると望ましい
(a)創発インフラ作りからはじめる
(b)(a)の結果、創発的戦略が生み出され、成功した場合には、それを格上げして包括的戦略として全社的に展開する
C
スタート・アップ期のように、2タイプの不確実性が併存している場合には、創発ループから包括ループへタイミングよくシフトしていくことが重要である
↓
・包括的ループ、創発的ループがそれぞれ円滑に回転するようにすること
・必要に応じて複数のループ間にまたがって動いていけるようにすること
第2回
リーダーシップのタイプ
ミドル
AM型(→AT型)
ミドルが創発的行動を実行すること
=お互いに作用し合い自立的に行動していくこと
AM’型(⇔AT型)
創発的インフラの形成と維持について、ミドルが貢献していくこと
=創発的プロセスを次々に生み出すような土壌を持った下位組織
↓
自立的かつ柔軟に動いていける組織
・主導型
・補完型
BM型(←BT型)
包括的戦略と包括的組織革新を実行していくこと
・部下にわかりやすく戦略を伝え、実行
・基本戦略を適切に実行できるような活性化された組織の形成
トップ
AT型(←AM型)
ミドルの創発的行動の許容であり、ミドルのAM型リーダーシップに委ねたもの
AT’型(⇔AM型)
創発的インフラの形成と維持について、トップが積極的に貢献していくこと
BT型(→BM型)
トップが包括的戦略を形成し、実行することと、その実行過程で包括的組織革新を実行していくこと
ミドルのリーダーシップ・プロセス
具体的戦略の形成
分析的方法
合理的な分析により論理的に形成
非分析的方法
直感に基づき形成
↓
連合的の形成(協力してくれる人々を集める)
上司の承認を確保する方法 ex受託型、説得型
非政治的方法〜直属の上司を説得
分析的方法〜合理的な分析により論理的に形成
非分析的方法〜危機感を訴えるよう、人々の感性や価値観に働きかける
政治的方法〜直属の上司以外の大きな権限を持っている人の承認を得る
上司の承認の確保を断念する方法 ex独走型、造反型
↓
具体的戦略の実行
対外的関係
→外部からの反対から戦略を守る
→協力者と情報を共有し連合体を維持
対内的関係
→動機づけ
→戦略への一体感を醸成し維持
→実績報酬によりやる気↑
全体プロセスのリードの仕方
率先垂範型
=自らが先頭に立って実践
包容力型
=有能な部下を抜擢し、サポートする
ゆらぎ
@行動レベルのゆらぎ
exタイプや方法の変更
⇒柔軟に対処すること
A心理的レベルのゆらぎ
@の変更にあたって心理的葛藤等があること
⇒常に問題意識を持つことが必要
トップのリーダーシップ・プロセス
戦略・ビジョンの形成
1.適応的
環境に合わせて形成
プロアクティブ
環境の変化を先取りして形成
2.分析的方法
合理的な分析により論理的に形成
非分析的方法
直感に基づき形成
3.組織全体の代表者としての立場
決められた手続に従ってコンセンサスを得ながら決定
一構成主体としての立場
決められた手続に準拠せず独断で決定
↓
(連合体の形成)
↓
戦略の実行
対内的関係→動機づけ
・
魅力的なビジョンの形成
・
魅力的であり、かつ明確的な戦略の形成
・
権限を下位に十分に委譲
・
実績報酬によりやる気↑
対内的関係⇒大きな問題なし
ゆらぎ
@
行動レベルのゆらぎ
⇒柔軟に対処すること
A
心理レベルのゆらぎ
⇒常に問題意識を持つことが必要
複雑適応系リーダーシップ
=創発ループを円滑に回転させるようなリーダーシップのこと
→組織内の人々の自立的活動を導き出していくこと
複雑適応系リーダーシップに適合するタイプ
トップ
AT型=○
ミドルの創発的行動の許容
BT型=×のケース
(全体の代表者として)包括的戦略の形成と実行
決まった手続に従うもの
⇒×自律的活動
BT型=○のケース
(1構成主体として)包括的戦略の形成と実行
個人としての考えに基づいて行動
⇒○自律的行動
AT型’型=○
創発的インフラの形成と維持
ミドル
AM型=○
創発的行動の実行
BM型=×
包括的戦略の実行
トップの決めた事を実行するのみ
⇒×自律的行動
AM’型=○
創発的インフラの形成と維持
複雑適応型リーダーシップの特徴
@
二重性とゆらぎ
従来の組織人格にもとづく行動←二重性
トップ←ゆらぎ
既定の手続に準拠し、コンセンサスを得た上で戦略を決定
ミドル←ゆらぎ
トップの決定に従い、割り当てられた職務を遂行
もうひとつの組織人格(個人人格)に基づく行動
トップ
既定の手続に準拠せず独断で決定
ミドル
トップの決定を待たずに、あるいは、トップの決定に反して行動
A
リスク・テイクと自己責任
B
柔軟性
二つの不確実性とリーダーシップの望ましいあり方
トップ
タイプ
トップがメンバーを複雑適応型系リーダーシップでリードすること
プロセス(戦略形成段階)
・環境と適合的なビジョン・戦略を形成すること
・非分析的でプロアクティブな戦略を作ること
プロセス(全体)
全体プロセスを強い率先垂範型でリードすること
ゆらぎ
ゆらぎが存在すること
特に戦略・ビジョン形成段階において、様々な手法を使い分けること
ミドル
タイプ
より強く複雑適応系リーダーシップでリードすること
プロセス(戦略形成段階)
できるだけ分析的かつ説得的で、環境と適合的な具体的戦略を作り出すこと
プロセス(戦略実行段階)
戦略の実行段階において、部下を巧みに動機づけること
プロセス(全体)
全体プロセスを強い率先垂範型でリードすること
ゆらぎ
・日頃から心理的なゆらぎを持っていること
・連合体を形成する段階においてゆらぎを生かすこと
・リーダーシップ・プロセスの各段階について、ゆらぎを持って遂行すること
↓
トップとミドルの連携(リンケッジ)
@
トップが創発的組織革新によって創発的インフラを作る
A
ミドルがそれに応えて様々な創発的行動をとり、トップはそのようなミドルの行動を許容する
B
さらにはそこから生まれる成果を受けてトップが全社展開する
第3回
経営戦略と組織の関係
経営戦略→組織構造「組織は戦略に従う」チャンドラー
経営戦略
トップにおいて決定
ex多角化戦略
↓
組織構造
戦略実行に適した組織が採用される
ex事業部制
⇒戦略決定後に計画通りに実行することが重視される
⇒従業員の創造性発揮×
経営戦略←組織構造「戦略は組織に従う」アンゾフ
組織構造
ex組織文化、風土、管理原則、従業員のアイデア
↓影響
経営戦略
戦略決定
企業環境:環境変化が激しい
↓↑
ビジョン:トップは明確なビジョンを提示するべき
↓↑
経営戦略:トップのアイデアだけでは対応できない
↓↑
経営計画:戦略と組織の融合が必要
↓↑
組織能力 ⇒ 戦略経営
組織の成長段階とトップ・マネジメントの重要性
成長の第1段階
トップの創造力
↓
・
役割分担が不明確
・
公式な命令系統が十分に形成されていない
成長の第2段階
指示・命令による従業員の管理
↓
集権化
↓
従業員の自主性が十分に尊重できない
成長の第3段階
管理者に対する権限委譲
↓
分権化
↓
トップの統率力↓
成長の第4段階
各部門の評価・調整制度の確立
↓
規則の高度化
↓
官僚制の弊害発生
成長の第5段階
個々人の創造的アイデアを組織的に統合
→今後、異部門交流を通じて、集団的学習が必要
組織の能力の養成とトップ・ミドルの役割
企業文化の変革
企業文化
@
企業のメンバーに共有されている価値観、考え方
A
その企業独自の行動パターン
変化と柔軟性
「適応性」の文化(外部の変化への対応)
⇒学習を通じて柔軟に対応
「参加」の文化(内部の行動の効率化)
⇒意思決定への参加を通じた動機づけにより効率化
⇒従業員の創造性↑&組織学習の活発化
安定性と方向付け
「ミッション」の文化(外部への変化への対応)
⇒特定の人物からの支持・命令により対応
「一貫性」の文化(内部の行動の効率化)
⇒従業員の行動の一貫性を確保することにより効率化
↓
組織学習の活発化
=組織構成員個々人の学習とそれら個人間の相互作用として行われるもの
組織学習を支援する施策
トップの役割
@
明確な将来のビジョンの提示
A
異部門交流
B
権限委譲と加点主義的人事評価
ミドルの役割
@
上下・左右双方向のコミュニケーションの維持
A
下からのアイデアを取り上げ・企画し、総合化すべき
↓
組織能力の向上を通じた組織変革
⇒新製品の開発を可能にする潜在能力
⇒コア競争力の前提
証券投資理論の基礎
リターン
内容・・・証券投資から得られる平均的な収益率
測定・・・収益率の期待値(期待値収益率)で測定
リスク
内容・・・証券投資から得られる将来の収益率の変動性
測定・・・期待収益率からの乖離度(分散or標準偏差)を測定
両者の関係
トレード・オフ関係
↓
ハイリスク・ハイリターン
ローリスク・ローリターン
リスク回避者
・
期待されるリターンが同じ場合には、リスクのより小さな投資案を選択する
・
負担するリスクが同じ場合には、リターンのより大きな投資案を選択する
無差別曲線
@
同一無差別曲線状にあるのなら、効用水準は同じ
A
左上にある無差別曲線ほど、投資家にとっての効力水準は高い
B
無差別曲線の形は、個人によって異なる場合がありうる
ポートフォリオによるリスク分散効果
=証券を集めてひとつの投資単位としたもの
ポートフォリオによるリスク分散効果(ポートフォリオ効果)とは、複数の投資案を組み合わせることによって、それぞれの資産が持っているリターンを犠牲にすることなく、リスクのみを減らすことのできる効果
ポートファリオの期待収益率
E(rp)=αE(r1)+(1−α)E(r2)
E(rp)=ポートフォリオの収益率の期待率
α=資産1の構成割合
1−α=資産2の構成割合
ポートフォリオの収益の分散
省略
第4回
実行可能集合(投資可能集合)と有効フロンティア
投資機会線
リターン(期待値)とリスクの関係を示す線
実行可能集合(ポートフォリオの傘)
投資家にとって選択可能な証券の組合せの集合
有効フロンティア
リスク回避的な投資家にとって選択の対象となる投資機会の集合
@
所与のリターンの下で、最も低いリスクですむこと
A
所与のリスクの下で、最も高いリターンを獲得できること
安全証券を組み入れた場合の有効フロンティア
最適リスク資産ポートフォリオ
投資家にとって最大の満足を得られるリスク資産のポートフォリオ
有効フロンティアと無差別曲線との接点
ポートフォリオの分離定理
安全資産があるとき、リスク資産間の最適ポートフォリオの決定は、安全資産を含めた全資産の最適ポートフォリオ決定問題とは分離して独立に行われる
資本市場線とリスクの市場価格
資本市場線
→資本市場において、すべての投資家に共通な期待リターンとリスクとの間のトレード・オフ関係を表現している
マーケットポートフォリオ
市場価値(時価総額)に応じて市場にあるすべての証券が含まれるように組まれたポートフォリオ
有効ポートフォリオの期待収益率
E(rp)=rf+[E(rm)−rf]/ρ(rm)×ρ(rp)
rf=安全資産の利子率(無リスク利子率)
E(rm)=マーケットポートフォリオの期待収益率
ρ(rm)=マーケットポートフォリオの収益率の標準偏差
ρ(rp)=有効ポートフォリオの収益率の標準偏差
*リスクプレミアム
リスクの価格×リスクの単位数
証券市場線と個別株式の要求収益率
アンシステマティックリスク
意義
十分な分散投資によって排除することができる可能なリスク
リスクの原因
・
当該企業の経営者の能力
・
当該企業の労使関係の状態
・
当該企業の研究開発努力の成果
⇒リスクプレミアムとして要求できない
証券市場線
E(ri)=rf+[E(rm)−rf]×βi
E(ri)=株式iの期待収益率
rf=安全資産の利子率(無リスク利子率)
E(ri)=マーケットポートフォリオの期待収益率
Βi=マーケットリスクで標準化した株式iのリスク(量)
アノマリー現象とその発生原因
証券市場で算定される理論上のリターン
→資本資産評価モデルの前提=効率的市場を前提
⇒非現実的
効率的市場
証券価格に影響を及ぼし得る情報をすべて正確に反映して価格形成が行われる市場
@
全ての投資家が、利用可能なあらゆる情報を無料で入手できること
A
入手した情報が価格に及ぼす影響について、全ての投資家の意見が一致していること
B
証券取引のコストがゼロであること
↓より現実に即して証券価格の形成過程を説明しようとする理論
@
マーケットマイクロストラクチャー
A
行動ファイナンス
アノマリー現象⇒発生原因が説明できない謎
@
企業規模効果
小型株のポートフォリオのリターンは、理論上のリターンよりも著しく高い
A
PER効果
低PER銘柄のリターンは、理論上のリターンよりも著しく高い
B
月曜日効果
月曜日のリターンは、理論上のリターンよりも著しく低い
C
1月効果
1月のリターンは、理論上のリターンよりも著しく高い
第5回
最適資本構成(MM理論)の命題の具体的検証
命題1
V=X/k*
*
V(企業価値)、X(毎期の期待営業利益)、k*(資本化率)
理論的には同価値の2社
↓
もし、Vl>Vu
↓
裁定取引
L社の株式売却⇒Vl↓
U社の株式購入⇒Vu↑
↓
Vl=Vu
命題3
投資判断基準としての資本コストは、投資のための資金調達方法とは無関係に与えられる
↓投資する際に
凾u>凾m
↓
凾u/凾m>1
↓凾u=凾w/k*代入
k*<凾w/凾m(新規投資の利益率)
↓
k*と新規投資の利益率の比較で投資決定をする
↓
資本構成とは無関係
*凾u=企業価値の増加分
凾m=新規投資額
凾w=新規投資から得られる営業利益
k*=企業が属するリスククラスに固有の資本化率
節税と倒産コストのトレード・オフ
Vu=(1−t)X/k*⇒負債なし
Vl=(1−t)X/k*+tkdB/kd(節税効果分)
⇒負債利用
=Vu+tB
⇒負債↑→企業価値↑
問題点
過大なレバレッジの妥当性
↓
@
倒産リスク→負債の利子率↑
A
倒産コスト→ex弁護士費用などの追加コスト
B
節税効果の不確実性
負債比率↑→赤字になる可能性↑
→節税効果なし
Vl=Vu+tB(節税効果分)−Q(B)(倒産コスト)
エージェンシー理論
エージェンシー関係とは、一人ないし複数の人間が、他の人間に何らかの意思決定権限を委譲することによって、自らのために仕事やサービスの遂行を委ねた一種の契約のこと
依頼人(プリンシパル)と代理人(エージェント)
ex株主 ex経営者
情報の非対称性の存在
情報の非対称性とは、情報が当事者の間に非対称的に分布しているという情報の偏在をいう
↓
企業経営にいかなる影響を及ぼすのか
株式発行のケース
オーナー経営者の持ち株比率100%
↓公募発行
エージェンシー関係発生(経営者VS外部株主)
↓
経営者の持ち株比率↓+持分価値↓
↓
これを補うために経営者は非金銭的出資↑
↓
企業価値↓
↓
防止策
@
モニタリング・コスト
依頼人が代理人の行動を厳しく監視する
A
ボンディング・コスト
過度の監視を抑制すべく代理人が保障行動をとる
B
残余損失
@、Aによりモラルハザードコストが減少する
⇒エージェンシーコスト
エージェンシー理論における最適資本構成
株式発行
So/So+B↑⇒外部株主と経営者の利益相反
↓
AC↑
So=外部株主持分、B=負債
負債発行
So/So+B↓⇒リスキー投資選考に対する誘因↑
↓
AC↑
最適資本構成
企業全体のACを最小にする水準が最適な資本構成となる
第6回
資金調達の優先順位
内部賃金 ex内部留保、減価償却費
・
機動的に使うことができる
・
情報の非対称性の存在から逆選択が生じる可能性有
↓
外部資金
デットファイナンス
・
経営への介入を排除できる
・
節税効果
銀行借入
・
機動的に調達できる
・
銀行との関係において情報の非対称性 小
→逆選択をある程度克服
↓
社債発行
↓
エクイティファイナンス
優先株発行
・経営参加権がないため企業経営への介入を排除できる
↓
普通株発行
*逆選択〜良質の財が市場から除かれ、悪質な財が残ること
良質な企業 5%(本来の資本コスト)
悪質な企業 10%
↓
情報の非対称性の存在
↓
投資家は両企業を適切に評価できない
↓
両企業に7.5%の資本コストを適用
↓
資本市場を利用するのは悪質企業のみ
配当政策
@MM理論
資本市場の完全性を前提にした場合、配当政策は、企業価値や株価に何ら影響を及ぼさない
↓
自家製配当
↓
株主は、自由に株式を売却できる
↓
希望する配当を自らの手で実現
株価↑=配当
Aエージェンシー理論
経営者
→内部留保↑
・
自由裁量権を高め非金銭的支出を行いやすくするため
・
外部資金調達↑
→資金提供者の監視が一段と厳しくなる
→逆選択の発生
株主
→内部留保↓
・
非金銭的支出を抑制したい
・
外部資金↑
経営者への監視強化
⇒両者の力関係で配当政策が決定される
B配当シグナリング理論
経営者と外部株主
情報の非対称性
↓
配当政策
↓
外部株主に企業の状況を知らせるシグナル
↓
投資家は優良企業と不良企業を識別
自己株式取得
=株式の発行会社が自社の発行済み株式の一部を自らの資金で取得すること
目的
・
株主への現金分配手段
・
リストラクチャリングの一環
・
資本構成の変更
自己株式取得の効果
(1)理論上
取得直前の株価と同価格で取得
↓
・
取得後でも株価は変化なし
・
配当した場合と比べても、株主の富は変わらない
(2)現実
取得直前の株価よりも高い価格で公表
↓
取得後の株価は、取得直前の株価を上回った
↓
自己株式取得により株価↑
@シグナリング効果→情報の非対称性の存在
企業が自己株取得
↓
現在の株価が割安であることを知らせるシグナルとなる
↓
外部株主は企業の収益状況の予測を修正
↓
株価↑
A最適資本構成の達成、レバレッジ効果
負債比率↑
↓
レバレッジ効果、節税効果を享受
↓
市場が配当よりも高く評価
↓
株価↑
B株主の個人税の節税
配当課税>キャピタルゲイン課税
↓
株主は配当より高く評価
↓
株価↑
金融仲介機関
=金融取引を円滑にする機能を果たす仲介者のこと
↓以下の困難を緩和
(1)情報の非対称性による困難
@
逆選択
A
情報生産コスト
→企業の情報を収集・生産
→コスト発生
→一家計には高すぎる
⇒金融取引をいやがる
B
モラルハザード
→発生する可能性あり
→家計は金融取引に応じない
→モニタリングコスト発生
⇒金融取引をいやがる
(2)将来の状態に関する不確実性の存在による困難
家計→短期で回収でき、リスク負担の少ない投資をしたい
↑↓ニーズの相違
企業→長期にわたって利用でき、リスクを負担してくれる資金が欲しい
メインバンク
@
長期かつ総合的な取引を維持
A
最大の融資シェアを持つと同時に大株主である
B
人的結合関係をもつ
→経済的合理性
銀行側の合理性
・
正確な情報を低コストで生産できる
・
メインバンクが代表してモニタリング
→すべての銀行がそれぞれモニタリングするよりも効果的
・
長期的な視点から貸出金利決定
→収益の安定化
企業側の合理性
・
金利変動リスクを回避
・
大銀行がメインバンクとなる
→厳しい審査あり
⇒自らが優良企業であることを市場に伝達(シグナリング効果)
機能
モニター機能
・
投資の評価
・
財務内容の監視
ラストリゾート(救済)機能
企業が倒産危機に陥ったときに、再建・救済など、再組織化のイニシアチブを取る機能