「企業会計と社会会計」の展望

一、「企業会計と社会会計」のめざすもの

(1)社会会計は会計学に対していかなるインパクトを与えたのか

(2)インパクトによって会計学的研究にいかなる積極的方向が付加されたのか

「企業会計と社会会計」(1971

1.   企業会計と社会会計の交渉−その類型と展開(能勢信子)

社会会計出現当初になされた会計学的所得概念と経済学的所得概念の比較対照の試み

2.   ミクロ会計とマクロ会計(玉田啓八)

社会会計の取引評価原則と勘定デザイン原理を企業会計に導入することを主張したFS・ブレイの「経済会計」論

3.   国民企業会計と国民経済会計(河野正男)

「社会会計の会計カリキュラムへの導入」の方向

4.   会計理論における公理主義の展開(原田富士雄)

R・マテシッチによる「会計一般の確定に基づくミクロ会計とマクロ会計の統合」の研究

5.   アカウンタントと社会会計(矢部浩祥)

SCユーのよる「ミクロ会計とマクロ会計の異同性の検討とオペレーショナル・ルールによる両会計の接合」の研究

6.   会計学の社会科学的思考と社会会計(合崎堅二)

AB・リチャーズによる投入産出モデルの企業会計に対する適用

問題点

(1)会計カリキュラムの中に社会会計を導入すること

(2)会計一般の画定の推進

会計一般の画定

隣接諸科学に見られる方法論的発展に歩調を合わせるものであって、将来の創造的協働、すなわちインターデシプリナリ−・アプローチの基本条件となる

→会計をいっそう人間や社会に密着したものとして構想することが可能

マテシッチの会計公理化の方向

「会計とは何か」の問に論理的に答える最も適確な方法

マテシッチの構想

ミクロ会計とマクロ会計を統合する基礎的前提

1.   貨幣価値
2.   時間
3.   構造
4.   二重性
5.   集計
6.   経済対象
7.   貨幣的請求権に関する非公平性
8.   経済行為者
9.   実体
10.            経済取引
11.            評価
12.            実現
13.            類別
14.            データ・インプット
15.            存続性
16.            拡大
17.            具体性
18.            配分
→所得循環および富の集計について基礎的前提に基づく方法で量的記述と計画が行われるとき
⇒『会計』

18個の前提

会計一般の特質ないし属性を抽出したもの

二、「資本・利益会計即会計」論と会計一般

マテシッチ理論の特徴

ミクロ会計(政府会計・企業会計・家計等)ばかりでなくマクロ会計(国民所得会計・投入産出会計・資金フロー会計・国際収支会計等)をも含む「会計一般」の画定

「再発見された会計」(リトルトン、1958

会計を社会秩序形成の用具として再発見してゆく進化の過程

財務会計→管理会計→社会会計

3つの会計領域が展開

リトルトン

資本利益会計即会計の立場から社会会計を厳しく批判

  ↓最終的には

不完全ではあってもそれも会計だと認めたと考える

会計一般

財務会計や管理会計等の企業会計システムと国民所得会計や資金フロー会計等の社会会計システムの両者を包含するような会計の一般的基礎を提供するもの

三、ソシオ・エコノミック・アカウンティングの提起する問題

ソシオ・エコノミック・アカウンティング

社会科学の諸分野における会計の適用を意味するもの

指数、比率、あるいは傾向のいずれにせよ、測定値を利用する

伝統的な会計

関心

選択された経済的効果(財務会計・管理会計・国民所得会計)に限定

社会・経済会計

諸会計領域のそれぞれを、今まで考慮されていなかった経済効果のほかに社会的効果をも包含するよう拡充する

エンティティー概念

財務会計

企業

社会会計、国民所得会計

国民経済、産業

社会・経済会計

変動的エンティティー概念の開発

伝統的な会計

関心

経済的効果だけに限定

測定単位

貨幣のみ

社会・経済会計

関心

社会的効果

測定単位

貨幣のみに限定されない

→果たして会計であるか?

 

<参考文献>

合崎堅二「「企業会計と社会会計」の展望」『会計』第100巻第1号、森山書店、19717