損益計算諸原則の会計学的考察

一、会計原則の姿勢

会計原則

企業経済の現実を正視した上で、演繹的に展開される会計理論の集約結果でなければならない

会計実践を規制している法的措置の前提となるべきものであり、その内容は企業経済の実現にこたえうるものでなければならない

帰納的なアプローチにしたがった原則に固執し、それらをめぐる論述が会計学の本流のようになっている

→我が国くらい

真の会計実務

表面に現れているもののほかに、企業の実態に即しない内容の法的規制のゆえにやむなく行われる会計の粉飾とくに逆粉飾とか、あるいは、会計実務の表面上の方式の欠点をカバーするために行われる各種の経理操作のあることを見逃してはならない

2、損益計算書の目的

損益計算諸原則

損益計算書は、企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間に発生したすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載し、当期純利益を表示しなければならない

一般原則:明瞭性の原則

→損益計算の外部への報告が重視

企業会計の外部報告に先立つ本来的な課題

企業の内側のものとしての生産に関する測定

→会計原則の主題もまさにそこの見出されなければならない

会計の中心的思考

     企業維持

     貨幣的測定

企業会計の報告

企業の内側のものである会計の外部に対する発表ということ

利害調整

企業の各方面の関係者相互の間の価値分配の調整

  ↓

分配問題

企業の経営政策ないし、企業の外側での経済政策の問題

企業維持を適時に確認する期間損益計算

適切な利害調整資料となり、配当、租税、その他の分配、払出しの源泉を正しく示すこととなり、企業が維持されてこそはじめて債権者は保護され、従業員雇用の能力も維持されることになる

三、会計主体と損益計算

会計上の判断の主体(会計主体)

近代的な段階の企業

1.  今日の多くの企業では,資本の内容の大部分を占める非貨幣的資産の多くが固定的なものになっているので,資本の処分換金とか用途転換とかは,実際問題として考えられなくなっている

2.  また、個々の資産をそれぞれに切り離して考えることもできなくなっているので,財産計算の立場は後退し,おのずから損益計算を本体とする動的会計が主になっている

3.  資本主ではなく,企業体そのものの立場から,会計上の判断を下さなければならなくなってきており,真の意味のゴーイング・コンサ−ンとして,生産能力の維持,継続のために企業実態の維持,実質的資本維持を図る損益計算が目指されなければならない

4.  名目的投下貨幣資本を会計対象としたり,一般物価指数を基準として歴史的原価を修正するというような貨幣資本計算の立場は,今もなお絶っていないが,しかし,実質資本を会計対象とし,個々の資産ごとに取替原価を基準として費用を計上し,その補償を越えて得られるもの,すなわち,実質的利益を目指す損益計算こそが会計原則の内容とならなければならない

会計主体について二元的立場

ハックス

企業

資本団体
国民経済的な生産機構

 ↓企業の二重的性格に応えるものとして

資本・実態結合計算

チェンバース

資産を個々の売却時価で評価し,評価差額を損益に計上することによって資産の購入資金の確保を目指し,企業維持を図る立場

期首自己資本の購買力修正を行ったものと期末自己資本との比較によって持分の増減を測定することとして,資本主の立場

二元的立場

論理の透徹しないところがある

四、損益計算過程の重視

制定の直接の契機

     公認会計士による財務諸表監査に根拠を与えること

     証券取引法に付帯する財務諸表規則の実態を示すこと

→報告中心の原則

会計士会計学的な思考→測定中心の会計原則の制定へ

 

企業会計

測定問題を中心として、検討され説かれなければならない

企業内で生起する価値関係を、企業全体を単位として、しかも、期間的に計算把握するのが会計の本来的な任務

 ↓具体的には

各個の企業の期間費用及び期間収益の認識、測定、対応が、会計原則の主な内容

 ↓そのうえで

対外的報告に係わる問題が説かれなければならない

ゴーイング・コンサーンの企業の動的会計にこそ重点がある

五、ゴーイング・コンサーン原理と損益計算

ゴーイング・コンサーン原理

企業の生産能力の維持の見地からすべての費用財の取替時価を考え、費用の時価基準計上を内容とする損益計算

六、実現基準と損益計算

実現基準についての注意

評価に関する一つの立場のように誤認

時価主義を排するようなことがあってはならない

評価差額

生産活動と無関係に生ずるもの

損益ではなく、架空利益ないし損失として排除すべき

→資本修正と解すべきもの

資産の原価評価

資産の費用化分が歴史的原価基準で各期に配分

  ↓

現在基準の売上高(収益)と対応させられる

  ↓

同期間的、同質的でない価値が比較

ex)時価が上昇している場合

費用化した資産の原価と取得時価基準額との差額だけ評価益が計上される

  ↓

実現架空利益の形状の容認

価額変動差額

架空利益として計算上排除されなければならない

評価差額は資本修正として処理することが望ましい

 

<参考文献>

不破貞春「損益計算諸原則の会計学的考察」『会計』第100巻第1号、森山書店、19717