損益計算書の本質
一、損益計算書の本質
損益計算書は・・・・・・一会計期間に発生したすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載し、当期純利益を表示しなければならない(企業会計原則)
損益計算書は・・・・・・一会計機関に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益に属する項目を加減して当期純利益を表示しなければならない(修正案)
収益と費用
成果と、それを生み出すための努力の関係
損益計算
努力と成果の対照計算
収益と費用の対応関係
質的な関係を意味するのではない
一期間の収益の額と、それから差し引かれる費用の額との間に努力と成果という対応関係
二、
対応関係を満足するような形にする
いずれか一方の金額を一定の基準でまず決定し、それとの関係が成立するように他方を決定することが必要
↓
今日一般的に適用されている方法
一期間の収益の額は、費用と関わり合いなしに、独立の計算基準に基いて決定される
収益との対応関係に規制されて費用額が決定
売上原価の計算
*前提
売上原価
製造間接費ないし固定費の配賦額を含めた全部原価として計算
三、
営業費
それぞれの費用種類に応じた計算基準に従って、収益の計算とは無関係に一期間の金額が決定
その期の収益に対してどのような関係
@ 営業費と収益との間に対応関係を認めようとする見解
A これを否定する見解
@
営業費と収益の間に、売上原価と収益との関係とは異なるが、いずれかの形で努力と成果という対応関係が認識できるとするもの
AAA委員会の報告書「対応概念」
費用を収益と対応させる基礎には、原因と結果の関係が認めえなければならないが、このような関係をたぐることは、実践上は不可能かまたは不必要なことがある。だから、費用を収益に関係付けるにあたっては、両者の間にいずれかの明白な相関関係が認められるならば、それに基いて行われるべきである。直接費については、収益との間に原因・結果の関係を認め得るので、収益に対応する額を決定するのは容易である。これに対して、間接費は、特定の収益との間に因果関係を識別できない。しかし、この種の費用に関しては、「それらが客観的に識別し得る将来の収益獲得能力と結びついていない限り、当期の収益との間に明白な相関関係があるとみなし得る」
ヘンドリクセン
費用を収益に対応させる型
・
直接的ないし製品的対応
・
間接的ないし期間的対応
A
営業費の額と収益との間に、努力と成果というごとき対応関係は認められないとするもの
AIA企業利益研究グループの報告書「変貌する企業利益概念」に示されている考え方
所得の決定はこれをより正確に表現するならば、(1)収益に生産物原価を対応せしめ、(2)その他の諸費用を適当な期間に配分する過程であるといえよう
・売上原価
収益との対応関係にあることが明確に認識されている
・その他の費用
かかる関係をあえて認識しようとはしない
営業費を期間費用として扱う手続
費用収益対応の原則に対する認められた例外
営業費の領域の計算手続が未発達なため
一般管理費に属する部分も販売活動と製造活動に合理的に配分するなどの手続を通じて、製品を媒介とする収益との対応関係を見出していくべき
↓
2つの見解
・営業費と収益が対応関係にないと結論するもの
・そのような事実は一応認めながらも、かかる計算手続を実践上の便法と見て、営業費についても売上原価と同様に、収益との対応関係があるとみなすもの
五、営業外費用と収益との関係
営業外費用
金融上の費用、繰延資産の償却額、ならびに費用と区別される損失
営業費と全く異なるところがない
・
営業費と同様な項目
・
明らかに対応関係が否定される項目
営業外収益との間にも対応関係がない
特別損益計算の区分においても、特別損失と収益または特別利益との間に対応関係が考えられていない
六、
収益との間に対応関係が明確に認識できる
売上原価のみ
→損益計算書に示されている計算
全体として、努力と成果の対照計算として性格付けえない
計算の性格
直接原価計算を取り入れた損益計算の主張の中に見出すことができる
直接原価計算方式
すべての費用を変動人固定費に区分し、売上原価から売上製品にかかわる全変動費を引いて限界利益をだし、次に全固定費を差し引いて純利益を算出するという計算過程
変動費
製品を媒介として収益との対応関係を保つように計算される
固定費
かかる対応関係を考慮することなしに、一定の基準で認識されたものがそのまま当該期間の費用
固定費と収益との関係
固定費の額が生産量にも販売量にも無関係であること、したがって生産量や販売量に規制される収益の額との間には対応関係はない
なぜ損益計算書に計上されるのか
成果たる収益に対する努力を意味するからではなく、成果と努力の対象計算によって計算された利益から単に回収されるべき消滅原価として損益計算書に計上されている
<参考文献>
森田哲彌「損益計算書の本質」『会計』第100巻第1号、森山書店、1971年7月