最近の商法上の「公正なる会計慣行」論の会計規範形成のあり方について
我が国の会計法規
商法を中心としたトライアングル体制
債権者保護の観点から取得原価主義の会計情報を重要視
→現在の市場経済に対応すべき会計現象がディスクロージャーされない
現実の経済現象を写像すべき会計情報
→既存の会計法規の「枠」に閉ざされる
→商法第32条2項のあり方等を提起
従来型の企業会計原則等と商法第32条2項の「公正なる会計慣行」の諸問題
商法第32条2項の基本的問題点
企業会計原則
企業会計の実務の中に慣習として発達したものの中から、一般に公正妥当と認められたところを要約した
→一般的に「実践規範」
企業会計原則の規範的性格
会計処理の妥当性に関する規範
「あるべき」(Sollen)規範としての確定性が定かでない
商法←強行法規
日本コッパース事件控訴審判決
企業会計原則の法的拘束力を否定
→「公正なる会計慣行」の法的意義?
最近の「GAAP」論等の基本的問題点
会計
・
犠牲者にとって、強力な武器になる
・
テクノロジーとしか技術としての面だけでなく、非常に強い文化的特性をもっている
→その国の国民性とか、宗教観、企業に対するロイヤリティ、所得観や資本観、利子や税に対する嫌悪の感覚などを無視して、会計基準を作ることはできない
会計のglocal accounting化
帰納法に基づく会計規範等の形成
→存在感のある会計規範形成の契機を与える傾聴すべき諸説
抽象的法概念に基づいて、それを具体的な指針として展開される所見
EC(EU)会社法第4号指令の「真実かつ公正な概観」
「真実かつ公正な概観」の基本的問題点
商法第32条2項の「公正なる会計慣行」
「公正なる」
↓変更
「真実かつ公正な概観」
情報を適切に提供するという趣旨を示し、具体的な指針となる
「真実かつ公正な概観」
英国会社法の契機
1948年:英国会社法第149条
会社のすべての貸借対照表は、当該年度末における会社の業務の状態の真実かつ公正な概観を提供するものとし、また会社のすべての損益計算書は、当該年度の会社の損益の真実かつ公正な概観を提供する
根本根拠、哲学的な概念
↓
現実の会計諸現象の中から帰納法的に、それらの概念の意味を吸い上げなければ
↓
形而的な「概念」の分析に帰結し、結局は、その法的機能性が問われる
1989年:英国会社法第226条3項
会社の個別計算書類は、貸借対照表および損益計算書の様式および内容ならびに計算書類の付属説明書によって提供されるべき追加的情報に関して附則第四の規定に準拠しなければならない
帰納法的な観点から、その「真実かつ公正な概観」に「追加的情報」を相関させたもの
第4号指令
「真実かつ公正な概観」の導入
↑
概念の定義自体が明らかでない
→解釈することは、極めて困難
コモン・ローを伝統にする英国会社法を起源
大陸法を伝統にする諸国の諸規定との調和化は難しい
フランコ・ジャーマン諸国
英国の強い要求に応じた「政治的妥協の産物」
大陸法系
一般原理からの演繹の形でものを考える傾向が強い
演繹法
英米法系
case by caseのアプローチ
帰納法的
存在(Sein)に基づく(帰納法による)、会計規範、会計法規範(会計慣習法)を確立する必要
日々の会計現象・存在(Sein)自体の中で規範現象(会計行為→会計慣行→会計慣習→会計慣習法)を確立
立法作用に関しても、その基礎となる立法事実と相関させる契機を与える
会計慣習法の確立の意義と符号
国際会計基準等の制定法のような上皇的な記述にな遺失する問題を是正できる
<参考文献>
弓削忠史「最近の商法上の「公正なる会計慣行」論の会計規範形成のあり方について」『会計』第162巻第1号、森山書店、2002年7月