「企業会計原則」と概念フレームワーク
「企業会計原則」
我が国における唯一の実質的な会計処理基準
諸法令の先導的役割・補完的役割
・連続意見書、商法・税法との調整意見書
会計基準として独立しているのではない
「企業会計原則」における重要項目に関する解釈、商法・税法との調整(国内調和化)に関する意見を提供するもの
「連結財務諸表原則」(1975年6月)
「企業会計原則」とは別個に独立した会計処理基準として作成されている
中間財務諸表作成基準、外貨建取引等会計処理基準、リース取引に係る会計基準
「企業会計原則」には網羅されていない個別問題ごとに設定
*「ピース・ミール方式」(piece-meal
approach)
個別会計問題ごとに基準作成を行う
*「デュー・プロセス」(due
process)
公開草案を公開してコメントを求める
・「セグメント情報の開示基準」(1988年5月)から
国際的調和化、国際的収斂の観点
1997年6月〜1999年10月
・「連結財務諸表原則」の全面改訂
・「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」
・「研究開発費等の作成基準」
・「退職給付に係る会計基準」
・「税効果会計にかかる会計基準」
・「金融商品に係る会計基準」
・「外貨建取引等会計処理基準」の改訂
新規基準・改訂基準
経済的実質優先(substance
over form)、市場価値基準(making to
market)の容認、発生主義(accruals)
→「企業会計原則」とは矛盾・相克する内容
「企業会計原則」の現状・問題点
IAS
・経済的実質優先主義
連結会計
支配力基準・影響力基準
・時価主義の容認
有形固定資産・金融商品・年金資産等の広範囲の資産項目
・発生主義
収益の認識基準
進行基準・工事進行基準
「企業会計原則」
・法律的形式主義
・取得原価主義の墨守
・実現主義
→ある会計領域
ダブル・スタンダード
「企業会計原則」の将来像
(1)「企業会計原則」の無修正放置
(a)現行のままに放置
→新規基準・改訂基準と相矛盾・相剋状態のままにダブル・スタンダード化
(b)現行の「企業会計原則」を非公開会社に適用する
→重層的基準設定アプローチ
(2)「企業会計原則」の大幅修正
(c)IASを大幅に盛り込んだ「企業会計原則」を作成する
→会計制度の自主性が損なわれ、制度的妥協を強いられる
(d)新規基準・改訂基準も一括導入した「企業会計原則」を作成する
(3)「企業会計原則」の解体・再構築
(e)「企業会計原則」は解体し、「企業会計原則」の規定や連続意見書・調整意見書に散在している会計規定を再編成し、IASと調和する形でテーマごとの個別基準化を行なう
→既にピース・ミール方式による複数基準化は実施されている
(f)個別基準化を施した上で、基準間に首尾一貫性のある「概念フレームワーク」に改造する
<参考文献>
菊谷正人「「企業会計原則」と概念フレームワーク」『会計』第163巻第6号、2003年6月