純利益の強固性
IASB
業績報告書に現在の純利益を表示しない方向で検討
情報セットアプローチ
単一の利益数値に財務業績を集約するのではなく業績の重要な要素を個々に開示するほうがより有益な情報を提供することができる
IASB業績報告プロジェクトの出発点としてのG4+1報告書
実現基準の批判
実現利益は未実現利益と童謡の経済的事象を繁栄しており、実現は利益の確認を意味しているにすぎない
リサイクル賛成
@実現の現実性
実現は後の単なる可能性ではなく実現のものとなった時点を示すものであり、現実と可能性との質的な違い
A経営者の裁量
経営者のコントロールがおよぶ要因とおよばない要因とは明確に区分すべき
B純利益の歴史的強固性
努力と成果の差額が業績であるという考え方の方が、理論上の持分の変動を業績とみる考え方よりも、伝統的に理解され、また支持されてきたので、業績測定値としてふさわしい
リサイクル反対
@ストックの変動に基づく損益計算におけるリサイクルの無意味さ
Aリサイクルによる利益操作の余地
実現時にリサイクルを行うことは経営者の判断いかんによって純利益が増減し得ることを意味するので、かかる利益操作の余地は排除すべき
Bリサイクルの複雑さ
実行可能性および効果が問題視
⇒利益概念の相違
コンベンションにもとづく会計
重要な会計の特性
会計の基盤をなしているコンベンションの必然的帰結によるものがある
convention
ある集団の構成員の多くがとっている行動様式のこと
元来先験的に決まるものではなく、自然法則のような、いかなる時代においても、またいかなる場所においても不変的なものではない
・May
会計は、少数の基礎的公準と多数の小仮定からなるか仮構的枠組に依拠しており、これらの仮定は、有益であるがゆえに受け入れられることが可能であり、また現に受け入れられているのであって、明らかに真実であるからではないのである
・高寺
会計が犠牲的特徴を備えたコンベンションにもとづいているということは、期間損益計算が擬制性をおびていることを意味し、そこから生み出される財務諸表もまた「真実と虚構が混合したフィクション」
・Lewis
コンベンション
期待の体系によって生み出された行動の規則性
規範的特徴
いったん成立したコンベンションが未来永劫固定的なものであることを要請しているわけではない
コンベンション
人々の同意によって成立した擬制
環境の変化などによってもはや有益ではなくなったコンベンションが人々との同意を得ることはできない
伝統的会計における経営者の意図・判断・期待
・黒澤
会計的計算書表は決して事実そのものの表示ではない。判断や意見や見積もりが会計的過程のなかに入り込んでいる
・May
近代企業の財務諸表は完全には事実をあらわしたものではなく、ある面では会計コンベンションにもとづき、またある面では明示的なあるいは暗黙の過程にもとづき、またある面では判断に基づいた意見の表明であるという色彩が強い
個々の会計処理の背後にある意図や判断や期待
→将来についての経営者の見解の表明
非財務情報の典型である経営者の見解
財務数値のなかにも伏在している
擬制に基づく実現基準
当該資産の市場における価格変動の影響が利益計算に及ぶのを回避する役割を果たしている
<参考文献>
山田康裕「純利益の強固性」『会計』第164巻第2号、森山書店、2003年8月