会計、企業会計、および会計学
T.会計とは何か
1.会計を定義することの難しさ
会計とは何だろうか
会計とよばれる分野を画定でき、また他の分野との区別が明確になるような、会計に固有の本質的な要素や特徴を見出す必要がある
2.アメリカ会計士協会による会計の定義
アメリカ会計士協会の専門用語委員会(1941)
会計とは、少なくとも財務的な性格を有する取引や事象を、意味ある形でしかも貨幣を用いて記録、分類、および集計し、さらにそれらの結果を解釈する、そういう技術である
↓
・行為の内容だけに焦点を合わせて会計が定義されている
・目的については一切触れられていない
3.現代における会計の定義
アメリカ会計学会の基礎的会計理論報告書作成委員会(1966)
会計とは、情報の利用者が情報に基づいて適切な判断と意思決定ができるように、経済的な情報を識別、測定、および伝達するプロセスである
アメリカ公認会計士協会の会計原則審議会(1970)
会計とは、一つのサービス活動である。その役割は、経済的な意思決定にとって有用であると考えられる、経済実態に関する主に財務的な性質の量的情報を提供することである
→会計の目的
情報に基づいて適切な判断と意思決定ができるようにすることにある、もしくは経済的な意思決定にとって有用であると考えられる情報の提供にある
↓
広すぎて、会計と呼ばれる分野と他の分野の区別が曖昧
4.会計とは何かについて考えることの大切さ
U.会計実体に基づく会計の分類
・マクロ会計
・ミクロ会計
・企業会計
・それ以外の非営利会計
1.マクロ会計とミクロ会計
マクロ会計
ある一国の経済を意味する国民経済やもっと広い意味の世界経済など、広範囲の経済領域を一つの会計実体とみなして行われる会計のこと
ミクロ会計
経済活動を営む個人や団体など、個別的な経済活動単位ごとに行われる会計のこと
2.企業会計と非営利会計
企業会計
営利を目的に主に生産を行う経済活動単位である企業を対象とする会計のこと
非営利会計
営利を目的とせず、それぞれの活動のために主に消費を行うさまざまな経済活動単位を対象とする会計のこと
3.企業会計と非営利会計の相違点
V.企業会計の基本的システム
二つの要素(会計行為)
(1)複式簿記による記録と計算
(2)財務諸表の作成とそれに基づく情報の提供(報告)
1.複式簿記による記録と計算
2.財務諸表の作成とそれに基づく情報の提供
W.会計情報の利用と企業会計の二つの領域
1.内部的な利用と外部的な利用
2.内部報告会計と外部報告会計
内部報告会計
会計情報の内部的な利用を念頭において実施される会計のこと
外部報告会計
会計情報の外部的な利用を念頭において実施される会計のこと
3.外部報告会計と財務会計の関係
外部報告会計の行われる理由
外部からの資本の調達を円滑に進めること
+α
税務のためにも企業の外部利害関係者に対して会計情報の提供を行う
外部報告会計の新しい可能性
従業員のための会計、消費者のための会計、環境保全のための会計、企業の社会的責任を明らかにするための会計
X.会計学の学問的領域
1.企業会計の基本的システムと会計学
企業会計の基本的システム
内部方向会計と外部報告会計の両方に共通した基本的な会計システム
二つの学問領域
(1)簿記論(簿記学)
複式簿記による記録と計算を主な研究対象とする学問
(2)財務諸表論(会計報告論)
財務諸表の作成とそれによる報告を主な研究の対象とする学問
2.内部報告会計と会計学
研究の対象
予測情報や非財務情報、さらには定性的な情報など、会計情報であるかどうかが曖昧な情報をも含む範囲の情報の提供
3.外部報告会計と会計学
財務報告論の新たな展開
財務報告をさらに広範な事業報告へと発展・拡大させようとする試み
財務会計の管理会計化
<参考文献>
石川鉄郎「会計、企業会計、および会計学」『商学論纂(中央大学)』第44巻第1号、2002年7月