我が国会計基準における概念的フレームワークの必要性

会計基準の2つのタイプ

@一つの総合的で体系的な会計基準を設定して、企業の会計実践を全体的に律し、指導してゆくもの

EX)

     アメリカの1930年代に入って展開された会計原則探求運動

     AAAによる1936194119481957年等の一連の会計原則

     我が国の企業会計原則

長所

     会計実践を全体として指導してゆくもの

     一定の会計理論的既存基いており、理論的整合性に貫かれている

     企業の取引活動が伝統的な枠組みにおさまっている限り、その有効性に何ら問題はない

短所

     新たな取引現象が続々と生ずるようになると、それまでの会計原則の規定ではこれに対応し得ない

  ↓

総合的体系的会計基準は別な形のものによって取って代わらなければならない

⇒A個別分野別の会計基準方式

A個別問題領域別に会計基準を設定し、会計実践を方向付けてゆく方式(picemeal approach

EX)

     アメリカAPBによるオピニオンやステートメントなど一連の会計基準

     FASBの財務会計基準

     IASCの公表した30有余にのぼる会計基準等

     我が国の連続意見書

     連結財務書評原則以降に公表されたセグメント情報開示基準、リース会計基準、外貨換算基準などから、最近公表されている研究開発費の会計基準、年金会計基準、税効果会計基準等

長所

     企業の新たな取引活動が出現したときに、これに関する会計基準を設定し、会計実践に対応

     基準の全体的規模が大きくなりすぎるというような問題が生じることはない

     会計実践に対して指導性を発揮することが可能

短所

     会計基準全体の背景にある会計理論的基準を表明するための場が存在しない

     会計実践を指導する上での求心力を欠くことになって、点でばらばらに便宜的な規定が設けられる

*会計基準全体の求心力

会計基準の全体を基礎付ける会計理論の体系

会計理論の出発点となる会計目的、会計理論の成立する環境的要因の特色を表す会計公準、会計理論を表明するのに必要な会計所概念の定義、会計処利・報告等の会計行動を基礎付ける行動基準など

→個別の分野別の分野別会計基準のすべてにとって共通するものであることが要求

企業会計原則を概念フレームワークに

企業会計原則

当初総合的体系的な性格

  ↓商法の規定に歩み寄る

基本理念から乖離

個別分野別会計基準の体系

求心力となる概念フレームワークが存在しない

  ↓

概念フレームワークの存在の必要性

2つの方式

     新たに概念フレームワークを設定

     現存の企業会計原則にその役割を託する生き方

IAS概念フレームワーク(19897月)

@     財務諸表の目的

A     基礎となる前提

B     財務諸表の質的特徴

C     財務諸表の構成要素

D     財務諸表の構成要素の認識

E     財務諸表の構成要素の測定

F     資本および資本維持の概念

目的

a)将来における国際会計基準の設定と現行基準の修正に役立つこと

f)財務諸表の利用者がIASに従って作成された財務諸表に盛り込まれている情報を解釈する際に役立つこと

g)国際会計基準の形成の方法に関する情報を提供すること

企業会計原則

IAS概念フレームワークの諸要素の相当部分をその構成要素としている

→改造することは困難ではなく極めて実行可能性が高い

 

<参考文献>

若杉明「我が国会計基準における概念的フレームワークの必要性」『JICPAジャーナル』No.525,APR19994