概念フレームワークと会計基準

最近の多くの会計基準

資産・負債アプローチによる新しい考え方

概念フレームワークの意義と展開

FASB

概念フレームワーク

一種の「憲法」として位置付けている

引用

概念フレームワークは、一貫した諸基準をもたらすことができ、かつ財務会計および財務諸表の性質、機能および限界を規定する、相互に関連した目的と基本概念脈絡ある体系、すなわち一種の「憲法」である。目的の方は、目指す目標を明らかにするのに対して基本概念の方は、会計の根底にある概念、つまり、報告されるべき事象の選択、その事象の測定、さらにはその測定結果を要約して利害関係者に伝達する手段を導き出す概念である。この種の概念は、他の概念が派生する源となり、会計および報告基準の設定・解釈・適用にあたってそれを繰り返し参照することが必要となるという意味で基本的なのである。

作成している主な国々

アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド

IASB:「財務諸表の作成表示に関する枠組み」(1989

→「G41」の国々〜概念フレームワークを作成している

我が国

暗黙の概念フレームワークという考え方

暗黙の概念フレームワークという考え方

白鳥、新井「日本における会計の法律的および概念フレームワーク」(1991

日本の企業会計制度

商法、証券取引法、法人税法の3つの法令によって形作られている(トライアングル体制)

企業会計制度の法律的および概念フレームワーク

英米やIASCのそれとは異なっている

日本の制度的・法律的なフレームワーク(大陸モデル)

投資家その他の利害関係者に対する財務情報の開示(英米モデル)

会計の主な目的

@     企業経営者による受託責任の遂行状況を明らかにすること

A     企業の処分可能利益(株主に対する分配可能利益および企業に対する課税所得)の計算を行うこと

B     株主その他の投資家に対して投資意思決定情報を提供すること

商法−Aの処分可能利益の計算

証券取引法−Bの投資意思決定情報の提供

商法の拘束を受けた形で会計基準が形成

我が国の会計基準

処分可能利益の計算を最重要視

原価・実現概念を基礎とする収益・費用アプローチ

英米の会計基準

投資意思決定情報の提供を重視

時価・発生概念を基礎とする資産・負債アプローチ

明示的概念フレームワークの必要性

意見書、会計基準のほとんど

国際基準との調和を強く意識

「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」

このような連結財務諸表制度の改革は、・・・・・・連結財務諸表を中心とした国際的にも遜色のないディスクロージャー制度を構築しようとするものであり・・・・・・

「連結キャッシュフロー計算書等の作成基準の設定に関する意見書」

国際的にもキャッシュ・フロー計算書は財務諸表の一つとして位置付けられている

「研究開発費等に係る会計基準の設定に関する意見書」

企業の研究開発に関する適切な情報提供、企業間の比較可能性および国際的調和の観点から、研究開発費に係る会計基準を整備することが必要である

「退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書」

今回設定する会計基準にも続く会計諸利およびディスクロージャーについては、国際的にも通用する内容となるよう、これを整備していくことが必要である

「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」

国際的な動向としても、IASCは、平成10年12月に金融商品にかかる暫定基準の策定を行っており、また、アメリカ財務会計基準審議会(FASB)は、平成5年5月に「特定の負債証券および持分証券への投資の会計処理」を、平成10年6月に「デリバティブおよびヘッジ活動に関する会計処理」を公表している。・・・・・・こうした国際的な動向も踏まえ、我が国においても、金融商品に関する諸課題全般に係る会計基準を設定することが求められている

「外貨建取引等会計諸利基準の改定に関する意見書」

国際的な会計基準との調和化や財務諸表の比較可能性の確保等の観点を重視するとの要請も考慮し、今般の改定において、為替換算調整勘定は資本の部に計上することとした

国際的な調和化

実質的には国際的な概念フレームワークに準拠した会計基準を策定すること

原価・実現主義を基礎とした我が国の会計基準

→時価・発生主義をも取り込んだ国際的な会計基準へと改定

収益・費用アプローチを基礎とする我が国概念フレームワーク

→国際的に認められた資産・負債アプローチを内包する概念フレームワークへと変革

概念フレームワークと会計基準の相互作用

     概念フレームワークに基づいて既存の会計基準を改定する動き(EX1

     会計基準の改定への要請が逆に概念フレームワークの改定に影響を及ぼす(EX2

EX1.アメリカにおけるリース会計基準

従来のSFAS13号における資産・負債の取り扱い

SFAC6号におけるし資産・負債の定義に合致するとは必ずしもいえない

SFAS13

オペレーティング・リース契約から生じる権利と義務を資産および負債として処理しえていない

『概念フレームワークとリース会計』(Dennis W.Monson

財務構成アプローチ

リース契約から生じる各々の個別の権利が資産をあらわし、各々の個別の債務が負債を表す

全体資産アプローチ

リース契約を結ぶことから生じる資産はリースし酸素のものであり、リース契約から生じる負債はリース期間中にリース料を支払う義務だけでなく、リース期間終了後にリース資産を返却する義務をも含む

SFAC6号の定義およびSFAC2号の質的特徴を用いる

「購入」の場合と数値例で比較

どちらが質的特徴に適合するか

⇒全体資産アプローチの方が優れている

EX2IASCにおける金融商品会計基準の場合

IAS39号「金融商品:認識と測定」(199812

金融商品の測定基準として減価と公正価値の混合形態

IASCの概念フレームワーク

測定基準について実質的なことを何も述べていない

IAS39号が新しい概念フレームワークを求めることになる

概念フレームワークと基準設定の現実

2つの問題

@     概念フレームワークの欠如

我が国における会計についての理論的な背景が世界に対して提示されていない現状では、我が国が個別問題で理論的に正しい議論を提案しても、受け入れられない

A     政治力の欠如

政治的な影響力は、経済力や当該分野での過去の貢献の蓄積など様々な要因で決定されるものであり、理論だけで決定されるわけではない

 

<参考文献>

平松一夫「概念フレームワークと会計基準」『企業会計』Vol.54,No.1、中央経済社、20021