法的紛争と公正会計慣行
企業会計法に関する法的紛争
法的紛争の解決
会計処理の適正が必ず法律上の根拠を有しなければならない
→商法、証取法、税法には、必ずしもその根拠となる明文の規定は存在しない
根拠
一般条項(包括条項)
⇒商法32条2項
公正ナル会計慣行
商法32条2項
「公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」
証券取引法193条に基く内閣府令
財務諸表等規則
法人税法22条4項
一般に公正妥当と認められる会計処理の基準
商法32条2項の意義
「公正ナル会計慣行」
「公正ナ」
営業上の財産および損益の状態に照らして公正な
「慣行」
「慣習」ではなく、必ずしも「長期にわたる実践を要求すべきではない」と考えられている
「斟酌」
諸種の事情を考慮に入れて考える、あるいは組み入れて解釈しなければならない
公正な会計慣行によらない特別の事情を立証できない限り、それに従わなければならない趣旨
公正会計慣行に含まれる会計基準
企業会計原則
財規1条2項
企業会計審議会により公表された企業会計の基準は、・・・一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に該当するものとする
→法的根拠を与えられている
それ以外の会計基準
何ら法的根拠がない
日本公認会計士協会の実務指針等
法的根拠が明確でない
企業会計基準委員会の公表する会計基準等
→法的効力が問題
民間の団体
→何ら法律上の根拠もない
EX)自己株式および法定準備金の取り崩し等に関する会計基準
法務省令である商法施行規則等が改正
→法的に問題はない
商法の規定に違反するような場合
→原則として商法が優先する
⇒法律の明文の規定で、財務会計基準機構にそのような権限があることを規定することが必要
<参考文献>
岸田雅雄「法的紛争と公正会計慣行」『企業会計』Vol.54,No.7、中央経済社、2002年7月