会計基準の動向と概念フレームワークのあり方
会計基準のための概念フレームワーク
収益・費用か、資産・負債か、歴史的原価か公正価値か、といった二項目対立的な議論
→意味はない
情報価値を高めるためには
⇒それぞれの会計観や測定属性を補完的な関係として使い分ける必要
T.概念フレームワーク
U.対立するアプローチの補完性
会計基準の基準概念をめぐる昨今の議論
収益・費用アプローチ化資産・負債アプローチか、歴史的原価会計か公正価値会計か、といった昔からの二項対立的枠組み
→選択の結果だけが従来とは逆転しているだけ
*20年代〜40年代
G.O.メイ
直接金融への傾斜が進む資本市場での投資家保護を理由に、貸借対照表から損益計算書へ、価値から原価へという重点の移行を指摘
対立的な会計観とされる収益・費用アプローチと資産・負債アプローチ
単独で会計基準を体系化しうる基礎概念ではない
相互補完的な関係
資産・負債の評価基準
どれか一つで会計測定を記述する基礎概念にはなりえない
歴史的原価会計or公正価値会計といった評価基準(測定属性)に基づく類型化
・ローカルな局面では役立つ
・ひとつを選んですべての資産・負債に適用することは出来ない
異なる「アプローチ」や異なる「測定属性」が相互に補完的
⇒上位の概念が必要
企業会計の目的、その目的に適合する情報の要件
*FASB,IASBのフレームワークの要件
レリバンスや信頼性ないし比較可能性といった、形式的なレベルにとどめられている
V.利益情報とバランスシート情報
収益・費用が資産・負債かという選択肢
当初は利益の測定にどちらからアプローチするかという観点の対立
if)対立が利益情報の有用性をめぐるもの
投資家への情報開示という会計目的を前提にするかぎり、純利益に代えて包括利益を主張する意味はほとんどない
株価の変動に対する説明力という、利益情報のバリュー・レリバンスを確かめるこれまでの実証研究
→純利益の情報価値が繰り返し確認される一方で、包括利益の有用性は必ずしも支持されていない
純利益に含まれない包括利益の個々の要素
限界的な説明力が認められる(純利益の開示を前提とした追加的な情報価値として)
⇒純利益でなく包括利益を開示することが財務諸表の有用性を高めるとはいえない
資産・負債の認識と評価を優先
×包括利益を「望ましい」利益の指標とみている
○バランスシートの情報そのものに新たな意味を求めている
W.概念と基準のフィードバック
バランスシートから利益を導くアプローチ
資産と負債から残余として株主持分が導かれ、株主持分の変動から利益が決められる仕掛けになっている
↓実際には
変動額が結果として純利益を表すように株主持分が定義され、残余が株主持分と解釈できるように資産と負債が決められる必要もある
資産・負債のストックと収益・費用のフロー
・利益の概念に基づいて同時に決定される変数
・どちらか一方が他方に従属して定義されるものではない
基礎概念の体系
個別基準間の整合性を助ける一方で、個別基準からのフィードバックを通じてたえず再検討されなければならない
<参考文献>
斎藤静樹「会計基準の動向と概念フレームワークのあり方」『企業会計』Vol.55,No.1、中央経済社、2003年1月