会計・監査実務からみた問題点
『監査上の諸問題』を考慮する場合のポイント
・
会計処理についてのルールが体系的網羅的に文書化されていること
・
ルールが継続的に適用されていること
・
取引の実態を客観的に証明しうる検証可能な確証が残されていること
会計処理における恣意的判断への誘引とマネジメントの対処
『監査上の諸問題』2(2)
「プロジェクトごとの原価の集計に恣意性が入り込んでいないかどうかについても留意しなければならない」
同一ユーザーに対する複数の契約
各個別契約の売上計上時期にズレがある場合
それぞれの契約に相互関連性がないにもかかわらず、人件費や外注費、経費のプロジェクト別の個別原価計算での負担を恣意的に配分することで利益の調整が行われる
ソフトウェアに代表される知的無形資産
知識・経験値の蓄積・活用により、複数の製品・サービスを同時に生産することが可能
ex)ソフトウェア部品の共有化など
複写という手段による転用が容易であるという特徴が存在
「無形」資産の場合
複写という作業でほとんどが完了してしまうケースも多い
ソフトウェアが無形物
容易に原価配分処理を行うことが出来る
→恣意的処理の誘引が強まる
恣意的処理
事業の損英気責任を有するマネジメントにとっても都合がよい(利益の調整が可能)
マネジメントレベルで行われる可能性もあり得る
問題解決のための実務的対応
不適切な「検収」により生じる問題
ソフトウェアの場合
ハードウェアのように運送業者による引渡や設置業者による設置が行われない
納品書や設置工事完了書のような第三者的確証が存在しない
多くの場合
発注者側と受注者側による相互の確認書類のみが引き渡し・検収の確証となる
→検収書の入手が必ずしも発注者側の代金支払いの承認を意味しないことも多く、検収書が仮受領書のような扱いになっていることもある
複数の製品サービスを伴う契約により生じる問題
一括契約において恣意的な売上金額配分を防止する手段
サービスの内訳価格を記載する
企業として定型化されたサービスの定義と標準価格を定めることが必要
* 比較すべき標準価格が定められていることによって、個別要素間の収益金額の配分を客観的に判定することが可能になる
米国基準
複数の製品・サービスについて個別契約用その契約金額とは別に企業が自主的に定めた価格(企業固有の構成価値)を基準として書く個別契約要素に按分する会計処理
<参考文献>榊正とし「会計・監査実務からみた問題点」『企業会計』Vol.58,No.2、中央経済社、2006年2月