現代中国における財務会計の構造

―中日両国の財務会計制度を比較して―

中国の企業会計制度(3つ)

「会計法」、「企業会計原則」、「業種別代表的会計制度」

「会計法」

法律により決められた重要な経済法規

会計業務における最高の法律

その他すべての会計法規及び制度の基本法

会計処理の基準を規定する以外に、会計の組織管理、会計の検査監督、会計に従事する人の職権及び会計文書管理などについて規定

「企業会計原則」

「会計法」を拠りどころにして、会計処理について具体的に規定するもの

「業種別代表的会計制度」

業種別の会計制度

従来:業種別・所有別に制定されていた数百種類の会計制度

→工業、農業、交通運輸業、観光業、飲食サービス業、建築業、対外経済合弁業、金融業など、8業種に分けて13種類の会計制度を制定

「企業会計原則」という共通の基礎の上に設定されたもの

会計方針、会計公準、一般原則、会計処理及び財務諸表はすべて共通

経営過程の特徴に応じて会計処理の内容が区別されている

会計改革の主要内容

会計処理方法の変更

従来:「会計法」と「統一会計制度」によって規制

「統一会計制度」

業種別、部門別、所有別に制定
⇒共通に遵守すべき統一的会計処理基準がなかった
→利用される会計方法や会計プロセスには、それぞれ違いがあった
⇒提供される会計情報は相互に比較不能

現在:新しい会計処理方法

会計原則が各業種の会計制度を統一的に規定

中国会計原則の特徴(2つ)

・政府によって統一的に制定される原則であること

・すべての会計制度が遵守しなければならない原則であるということ

会計の基本方式の変更

従来:「資産(運用)=資金(源泉)」(資金平衡表方式)

当時の高度集中の計画経済管理体制に対応するもの

経済の改革の進展

→企業は、製品を生産・販売をする独立の主体
⇒資金平衡表方式では、企業の所有関係を反映しなくなった

現在:「資産=負債+資本」(貸借対照表方式)

従来の平衡表方式にとって代わる

企業の会計情報

利害関係者など、多方面の要請を満足できるものでなければならない

国際的に通用する財務諸表への変更

従来:中国の会計報告体系

計画経済管理に適応するためのもの

一貫性にかけ、社会の各関係者の要請を満足するものではなかった

・財務諸表

多種雑多
国際的に通用する財務諸表ではない
中国の対外経済交流に不都合

企業会計原則(会計報告体系について)

貸借対照表を従来の資金平衡表にとって代わるもの

財政状態変動表と付属明細表を加えた

国際的に通用する製造原価計算方式の採用

従来:「コスト法」

製品コスト

製品原価だけでなく、生産と管理の過程において発生するすべての費用を算入(管理費用も製品コストに算入)

→企業の経営状況と経済効率を反映できない

企業会計原則

「製造コスト法」と「コスト法」にとって代わるもの

製造直接費、すなわち材料費、労務費、製造経費を製造原価に算入、管理費、販売費、財務費用などを期間費用として、期間損益に直接算入し、その期で償却することにした

保守主義の原則の採用

保守主義の原則

市場経済における市場競争、経営リスク、生産経営活動等の不確実さが会計処理に与えた課題

企業会計原則

保守主義の原則を中国会計処理の一般原則として採用

中国財務会計制度

中国財務会計制度の基本的構造

会計制度

会計業務の組織と処理の規範

経済管理の重要な制度の一つ

会計が従うべき会計原則、方法、手続等を具体的に規定

中国の会計制度(2つに大別)

・財務会計制度

・管理会計制度

財務会計制度の内容

(1)勘定科目表と仕訳方法の説明。主要簿総勘定元帳と補助簿の名称、番号付け、分類と審査の内容的規定を含む

(2)各種経済活動に対する会計伝票と帳簿の種類と様式。原始伝票、仕訳伝票、日計帳、元帳と明細表を含む

(3)財務諸表の種類と様式。報告用の財務諸表と内部管理財務諸表を含む

(4)帳簿の記録方法と手続、定期的集計及び決算手続

(5)主要な経済活動の会計処理手続。各種の経済活動(仕入、生産、売上、在庫、資金、固定資産等)の伝票の伝送手順と会計処理の手続を含む

管理会計制度の内容

(1)原価の計算と統制の制度

(2)企業内部の決算制度と移転価格の決定

(3)各責任部門の経済活動の分析方法

中国の「統一会計制度」

勘定科目表、仕訳説明、財務諸表の種類と様式だけ

 ↓会計制度のほかの部分

企業の会計担当者が、各企業の業種の特徴に応じて設定

国家からの強制、統一的な規定は存在しない

中国における各業種の「統一会計制度」

財務部会計事務管理司によって設定(日本の財務省企業会計審議会に相当)

中国の会計制度→規定が少ない

柔軟性がある

社会経済環境の変化に適応できる強い生命力

EX)帳簿組織を強制的に規定しておらず、企業はこれらを自主的に決定することができる

勘定科目の体系と特徴

勘定科目表

会計制度の主要な骨格を成し、財務諸表を設計するための基礎

標準的勘定科目表

総勘定元帳科目…65

日本のそれと比べるとかなり少ない
 ↑
日本の総勘定元帳科目の一部は、中国では内訳科目になっているため
EX)有形固定資産
建物、構築物、機械装置など→内訳科目
EX)無形固定資産
営業権、借地権、鉱業権など→内訳科目

勘定科目の内容(微妙な差異)

中国での繰延資産の内容

開業費、賃借固定資産の改良支出、繰延期限1年以上の固定資産修繕支出、その他繰延費用だけ

*開発費、試験研究費など→管理費用

中国における財務費用の内容

支払利息(減:受取利息)、為替差損(減:為替差損)及び関連する手数料など

*支払利息及び割引料、社債利息と営業外収益に属する受取利息及び割引料→管理費のなかの財務費用

中国での投資収益

企業が投資から得た収入あるいは発生した損失

*有価証券利息、受取配当金など→投資収益勘定に計上

中国での営業外収益と営業外費用(日本と全く異なる)

営業外収益

固定資産棚卸増、固定資産売却益などが含まれる

営業外費用

固定資産棚卸減、固定資産売却損、災害等による損失などが含まれる

→日本では特別利益・特別損失

土地使用権(無形固定資産)

国有土地の「有償使用政策」実施以来

・自社用オフィスビルの新築のために、「土地譲渡金」を支払い、土地使用権を取得した場合
無形固定資産勘定に計上
・不動産開発のために土地使用権を取得した場合
開発原価という勘定科目に計上

帳簿組織と記帳手続

中国の西欧式簿記

20世紀初頭、日本から伝わってきた

  ↓その結果

中日の帳簿組織と記帳手続は殆ど同じ

仕訳帳と元帳を分別
多欄式帳簿も導入

中国の帳簿組織

仕訳帳

現金出納帳
預金出納帳
仕入帳
売上帳
当座預金出納帳

補助明細帳

材料明細帳
商品明細帳
固定資産明細帳
受取手形明細帳
売掛金明細帳
有価証券明細帳
販売費用明細帳

備忘記録簿

リース資産記録簿
仕掛品記録簿

3伝票制

入金伝票、出金伝票、振替伝票

財務諸表の内容と形式

企業の会計報告

財務諸表

財務情報説明書

財務諸表

貸借対照表、損益計算書、財政状態変動表(あるいは資金繰表)、これらに関連する付属明細表(EX.固定資産明細表、在庫明細表、使用明細表、売上利益明細表、営業外収支明細表等)

財務諸表の形式

前期と対照するか、実績と計画(予算)を対照するかたち

(1)貸借対照表

企業のある特定時期(一般には月末または年度末)における財務状況の報告書

左右均衡の勘定式

(2)損益計算書

企業の一定期間(一般にはつきまたは年度)の経営成果を反映する財務表

・項目

営業収益、流通税、商品原価、営業費用、営業利益、その他業務利益、営業外収益、営業外費用、利益総額、所得税、純利益

・報告式

上から下へ加減する形

利益処分の各項目

損益計算書に入れなくてもよい
「利益処分計算書」を設けて表示することもできる

(3)財政状態変動表

企業の一定期間の資金投下と資金運用活動を総合的に示し、また企業の資産、負債と資本の発生と変動の状況を示す会計報告書

・項目

流動資金源泉
流動資金運用

流動資金源泉

利益源泉とその他源泉に分けられて項目別に表示

流動資金運用

利益配分とその他配分に分けられて項目別に表示

流動資金の純増加額

流動資金源泉の各項目合計額から流動資金運用の各項目の合計額を差し引いた残額

財務諸表の特徴

財務諸表の形式

中日両国間に大きな差異はない

中国の貸借対照表の項目

総括的で簡明

損益計算書の形式

中日両国の間に大きな隔たり

日本のP/L

営業損益計算・経常損益計算・純損益計算・未処分損益計算(4区分)

中国のP/L

営業損益計算・経常損益計算・純損益計算(3区分)

未処分損益計算→利益処分計算書に含む

売上原価

日:期首商品棚卸高に当期商品仕入高を加えたものから期末商品棚卸高を差し引いた形式

この規定がない

財務諸表の内容

大分類項目と中分類項目の内容は同じ

部分的に総勘定元帳の経常方法が違う(↑上述)

中国の会計原則

中国における会計原則の確立

会計原則

会計計算と記録の規範

中国における会計法規の重要な部分

各種会計制度を制定するための主要な根拠

改革以前

単独の統一的会計原則がなかった

  ↓

会計監査人が従う会計原則の大部分

会計法規と会計制度の規定のなかに分散化

経済体制の改革の進行、対外開放政策の実施

会計制度は市場経済の需要に十分な対応ができず

極限性と不適応性が顕著

「会計審査制度」

各業種と所有制によって制定

 ↓

各業種、各所有制の間に統一的で、共同で従うべき会計計算と記録の基準を規定していない

→比較性が欠如

⇒マクロ経済の政策と調整に不利な要素

企業連合と企業集団の会計計算と記録の基準を設定できなかった

具体的な会計計算と記録方法

企業規模を区別することなく、政府部門によって規定

経営特徴に応じて、自身の経営管理上の必要を満たす会計計算と記録方法を制定することができなかった

成文化された単独の会計原則がない

外国企業が中国の会計政策と会計方法を了解して投資可能性の研究を行うのに不便

対外経済交流とその発展の促進にも不利

各種企業に適応できる一般的な会計原則を制定

市場経済にとって必要

政府が管理職能を変更したり、マクロ経済の調整と制御を行なうにも、またミクロ経済活性化のためにも必要

対外経済開放と交流にとっても必要

財務部会計事務管理司

198810

会計原則を制定するために会計原則スタディーグループを設置

19893

「我が国会計原則の制定に関する初歩的な試案(議論文)」を発表
「我が国会計原則に関するいくつかの主要問題の研究と議論(意見書)」を発表
「会計改革参考資料」を公表

 ↓何回かの修正改訂を経て

「企業会計原則」

企業会計原則の構造

中国企業会計原則の制定と公布

中国の会計が新しい発展段階

財政部が公布した「企業会計原則」は会計の基本原則についての規定

具体的細則

共通業務会計原則

各業種の会計処理における基本業務の共通項目についての会計処理を規定

会計報告原則

会計諸表の内容、表示方法、様式などを規定

特殊業種・特殊業務会計原則

特殊業種・特殊業務の基本会計業務の勘定科目を規定

会計公準

会計公準

会計主体、継続企業、貨幣的測定、会計期間

会計主体

「会計計算は企業に発生した各種の経済取引を対象とし、企業自身の各種の生産経営活動を記録し表示するものでなければならない」

・会計

企業で発生する各経済現象を対象として企業の生産活動と経営活動を記録・報告すべきもの

継続企業

「会計計算は企業の存続と正常な生産経営活動を前提とするものでなければならない」

・会計

企業が継続的に正常な生産、経営活動を行なうことを前提

貨幣的測定

「会計計算は人民元を基調本位通貨とする。取引の収支が外貨を主とする企業は、特定の外貨を選定して基調本位通貨とすることもできるが、作成する財務諸表は人民元に換算して表示しなければならない。国外企業が国内関連部門に財務諸表を作成報告するにあたっては、人民元に換算して表示しなければならない」

会計期間

「会計計算は会計期間に区分し、期間別に勘定科目を決算し財務諸表を作成しなければならない。会計期間は年度、四半期及び月次に区分する。年度、四半期及び月次の起算終了日は西暦を採用する」

一般原則

(1)真実性の原則

「会計計算は実際に発生した経済取引を根拠として、財政状態及び経営成績を真実に表示しなければならない」

最上位に位置する原則
相対的真実
「企業会計原則」の他の原則に準拠することによって達成されるもの

(2)相関性の原則

「会計情報は国家のマクロ経済管理の要請に適合し、関連各当事者が企業の財政状態及び経営成績を理解する必要性を満足させ、企業が内部経営管理を強化する必要性を満足させるものでなければならない」

相関性という情報要件を満たす記帳手段を用いて正確な会計帳簿を作成すべきこと
そのような正確な会計帳簿に基づいて財務諸表を作成すべきことを要求する一般原則

(3)比較性の原則

「会計計算は規定された会計処理の方法により実施しなければならず、会計指標が一致し、相互に比較可能でなければならない」

会計情報の質を要求する一般原則

(4)継続性の原則

「会計処理の方法は前後の各期間で継続していなければならず、みだりに変更してはならない。変更する必要性が確実にある場合は、変更した旨、変更の理由及び当該変更が企業の財政状態並びに経営成績に及ぼす影響を、財務報告書において説明しなければならない」

一つの会計事実について複数の会計処理の原則または手続の選択・適用が認められている場合には、正当な理由がない限り、いったん採用した会計処理の原則または手続は毎期継続して適用すべきことを要求する一般原則

・正当な理由によって重要な変更を加えた時

それを財務報告書で説明しなければならない

(5)適時性の原則

「会計計算は適時に実施しなければならない」

会計情報の質を要求する一般原則

(6)明瞭性の原則

「会計記録及び財務諸表は明瞭でなければならず、理解及び利用に役立つものでなければならない」

財務諸表やそれに関連した重要な事項を明瞭に表示することによって、適切で十分な情報の開示を行うべきことを要求する一般原則

(7)発生主義の原則

「会計計算は発生主義を基礎としなければならない」

費用と収益の認識・経常はいわゆる発生の概念に基づいて行なわれる

(8)費用収益対応表示の原則

「収入は収入と関連する原価、費用と相互に対応しなければならない」

明瞭性の原則から要請されるもの
費用と収益は発生源泉に従って明瞭に分類し、関連する費用項目と収益項目を損益計算書に対応表示すべきであると規定

(9)保守主義の原則

「会計計算は保守主義の原則の要請を遵守し、発生が見込まれる損失及び費用は合理的に計算しなければならない」

不確実な将来がもたらす危険に備えて適度に慎重な判断に基づく会計処理を行うべきことを要求する一般原則

(10)取得原価主義の原則

「各種の財産物資は取得時の実際原価により価値計算しなければならない。物価が変動した時には、国家が別途規定する場合を除き、その帳簿価額を修正することはできない」

資産評価の基本原則

(11)資本と利益の区別の原則

「会計計算は収益的支出と資本的支出を合理的に区分しなければならない。およそ支出の効果が当期にのみ関係する場合には、収益的支出としなければならない。支出の効果が数会計期間に関係する場合には、資本支出としなければならない」

元本としての資本と果実としての利益を明確に区別することによって適切な損益計算を行うべきことを要求する一般原則

(12)重要性の原則

「財務報告書は企業の財政状態及び経営成績を全体的に表示しなければならない。重要な経済取引については、個別に表示しなければならない」

資産の主な内容

資産

企業が所得または支配している、貨幣で測定可能な経済資源であり、各種の財産、債権及びその他の権利

・区別

流動資産、長期投資、固定資産、無形固定資産、繰延資産、その他の資産

(1)流動資産

1年いないもしくは1年を上回る営業循環期間内に現金化または費消することのできる資産を指し、現金及び各種預金、短期投資、未収及び前払債権、棚卸資産など

(2)長期投資

1年以内に現金化することが予定されていない投資を指し、株式投資、債券投資及びその他投資

(3)固定資産

耐用年数が1年以上で、単価が規定された基準額以上で、かつ使用家庭において本来の物質的形態が維持される資産を指し、建物及び構築物、機械設備、車両運搬具、工具器具など

(4)無形固定資産

企業が長期に使用する現物の形態をもたない資産を指し、特許権、非特許技術、商標権、著作権、土地使用権、営業権など

(5)繰延資産

全額を当期の損益に計上することができず、その後の年度において数期間にわたって、償却すべき各種費用を指し、開業費、賃借固定資産の改良支出など

(6)その他の資産

上記の各項目以外の資産

資産評価の基準

(1)資産評価の基本原則

取得原価による評価を原則

・資産の取得原価

資産の種類に応じた費用配分の原則によって、各事業年度に配分

(2)棚卸資産の評価

取得時の実際原価により計算

・計画原価または予定原価

期間別にその原価差異を算定
実際原価に修正

・各種棚卸資産の払出時

FIFOLIFO、総平均法、移動平均法、個別法等の方法を選択

(3)有価証券の評価

取得時の実際原価により記載

・当期の有価証券の収益及び有価証券を譲渡して取得した収入と帳簿原価との差額

当期の損益

(4)債券の評価

売掛金

貸倒引当金を計上することができる

貸倒引当金

財務諸表において売掛金の控除項目として記載

各種の未収及び前払債権

適時に決算、督促し、定期的に取引先と勘定照合しなければならない

(5)有形固定資産の評価

有形固定資産

取得時の実際原価により記帳

減価償却

固定資産の原始取得価額と見積耐用年数に基づいて年数均等法を採用して計算
*関連規定に適合する場合には、加速償却法を採用することもできる

未だ使用に供していないか、使用に供した後、竣工決算を処理する以前に発生した有形固定資産の借入金利息並びに関連費用、及び外貨借入金の為替差額

当期の損益に計上

(6)無形固定資産の評価

購入取得した無形固定資産

実際原価により記帳

出資受け入れにより取得した無形固定資産

評価により確定された価額または契約の約定価額により記帳

各種無形固定資産

受益期間内に期間均等償却し、未償却残高を財務諸表に記載

(7)無償取得資産の評価

贈与その他無償で取得した資産

公正な評価額を取得原価

負債の主な内容

負債

貨幣で測定可能な、資産または役務で返済する必要のなる債務

・区分

流動負債、長期負債

(1)流動負債

1年以内または1年を上回る営業循環期間内に返済する債務

短期借入金、支払手形、買掛未払金、前受金、未払賃金給与、未払税金、未払配当金、その他未払金、未払費用等

実際発生額により記帳

(2)長期負債

返済期限が1年超または1年を上回る営業循環期間を超える負債

長期借入金、社債、長期未払金等

・長期借入金

借入金の性格別に実際発生した金額を記帳

・債券の発行

債権の券面価額により記帳
*債券が割増または割引で発行されたとき
実際入金額と券面価額の差額は独立して計算し、債権の満期到来までの各期間の支払利息を相殺減額するかまたは増額しなければならない

・長期未払金

設備導入未払金、金融リース、固定資産未払金等
実際発生額により記帳

所有者持分の主な内容

所有者持分

企業投資者の企業純資産に対する所有権

企業投資者の企業に対する投下資本金及びこれにより形成された資本準備金、利益準備金並びに未処分利益等

(1)投下資本金

投資者が企業の経営活動に実際に投下した各種の財産物資

実際の投資金額により記帳

・株式制企業が発行する株券

株券の券面額より株式資本金として記帳

(2)資本準備金

株式資本剰余金、法定財産再評価益、寄付受入による資産価値等

(3)利益準備金

国家の関連規定に従って利益から積み立てた金額により記帳

(4)未処分利益

企業が次年度以降に処分するために留保した利益または処分予定の利益

収入(収益)の主な内容

収入

企業の商品販売または役務提供等の経営取引において実現した営業収入

営業収入の実現を合理的に認識し、かつ実現した収入を適時に記帳

企業は商品を出荷し、役務を提供し、同時に代金の受取を完了or代金請求の証憑を取得したとき
→営業収入を認識

・長期工事契約

工事進行基準または工事完成基準

・売上返品、売上値引、売上割引

営業収入の減額項目として記帳

費用の主な内容

費用

企業の生産経営過程において発生する各種の費消

・直接労務費、直接材料費及びその他の直接費用

生産経営の原価に直接計上

・各種の間接費用

一定の基準により配付し生産経営の原価に計上

・管理費用、仕入れ費用、財務費用及び販売費用

期間費用として当期の損益に直接計上

実際発生額により費用及び減価を計算

・予定原価または計画原価の方法を採用

原価差異を合理的に計算し、月次に財務諸表を作成するときには実際原価に修正しなければならない

利益の主な内容

利益

企業の一定期間の経営成績

営業利益、投資純収益及び営業外収支の純額

・営業利益

営業収入から営業原価、期間費用及び各種の流通税並びに付加税と付加費用を控除した後の残額

・投資純収益

企業の対外投資収入から投資損失を控除した後の残額

・営業外収支の純額

企業の生産経営と直接関係しない各種の営業外収入から営業外支出を控除した後の残額を指すもの

財務会計と税制

改革開放以前の財務会計と税制

改革開放以前の財政管理体制のもと

会計制度…財政法規制度の重要な一部分

統一的な計画経済管理体制

財政・税務・会計制度の一貫性という原則が実行されていた

会計

財政の基礎

会計制度の中に租税関係の規定が多く含まれていた

財政と税務上の多くの規定

会計制度を通して実行

→会計制度と租税制度の相互依存関係が形成

改革開放後の財務会計と税制

経済体制改革の進行

市場経済が発展

会計情報はここの債権者と投資者の必要を満足させなければならない

経済活動の会計処理

財政制度と一致しなくなる可能性

会計原則

相対的な安定性がある

財政制度は常に変化する

会計原則の中に財政制度と一致しない事項が見出されるとき

前提:会計の科学性と会計体制の完備性

→財政制度との調和に努力しなければならない

会計原則と税制の関係

会計原則と税法の調和が取れるように、納税所得額を調整し、納付法人税を計算

会計処理方法

企業の一定時期の税引前会計利益と課税所得との間の計算指数または計算時間が異なることにより発生する差異

永久差異

一時差異

・永久差異

企業の一定時期の税引前会計利益と課税所得との間の計算指数が異なることによって発生する差異

以後の各期で取り戻すことができない

・期間差異

企業の一定時期の税引前会計利益と課税所得との間の差額で、その発生は、ある種の収入と支出項目の課税所得に計上する時期と税引前利益に計上する時期が異なることによるもの

若干の期間内で解消できる

これらの異なる差異

会計計算上では、「納税額法」または「税効果会計法」が採用

(1)納税額法

当期の税引前会計利益と課税所得との差異による税効果金額を当期の損益に直接計上し、以後の各期には繰り延べないもの

当期損益に計上した所得税費用

当期に納付すべき所得税と等しい

(2)税効果会計法

一般に繰延法で帳簿処理

・繰延法

当期に期間差異から発生した税効果か金額を、この差異と反対の変化が発生する期間まで保留すること

「債務法」で帳簿処理を行なうこともできる

・債務法

当期に期間差異から生じた税効果金額を、この差異と反対の変化が発生する期間まで保留する方法

欧米の複式簿記

日本から中国へ伝えられた

帳簿の構成や記帳手続は日本と中国の間に大きな差異はない

会計の基礎である記帳処理において共通性を有する日本の会計制度

中国に手本を示すべき立場

 

<参考文献>

袁??「現代中国における財務会計の構造―中日両国の財務会計制度を比較して―」『研究年報 経済学』Vol.60, No.4、東北大学経済学会、19991