企業会計における資本概念の日中比較
中国会計・資本概念の改革
1992年11月
「企業財務通則」・「企業会計準則」発表
93年7月に施行
会計改革
従来、業種毎に分かれていた会計制度を一本化
西洋・簿記会計の方式を採用
→中国の会計・財務を国際的に共通の基盤に立たせることを意図
最重要事項
「資本金概念」の導入
「資本・資本金」勘定
「権益」の項目
「資本金」
「国家資本金」・「法人資本金」・「個人資本金」・「外国企業資本金」勘定に区分
⇒中国独特の制度
複数の資本金の分立計量
一元的単一の資本金概念を撮る西方会計と基本的に相違する
会計改革の最大の問題点
中国の新・資本概念
改革前の資金平衡表
固定資産・流動資産・専用資産=固定基金・流動基金・専用基金
対置して掲記
→固定資産(減価償却後のストック)とその源泉たる固定基金(資本)とが、常に恒等・等額になることが要請
改革後の新制度
新たに源泉概念
「資本金」を分割して、複数区分の資本金勘定(国家資本金・法人資本金・個人資本金・外国企業資本金)を規定
西方簿記会計
資本項目
資本金・資本剰余金・純利益等の複数の勘定に分立記帳
分立記帳
資本剰余金…増資・減資等の資本取引
利益剰余金…利益の留保たる損益取引
→企業の資本内部的・調達的処理取引に係る
貸借対照表貸方勘定における勘定科目の会計的意味
「内的要素」に依存
「権益」概念の検討 ―「国家資本金」に触れて―
貸借対照表貸方勘定の負債・資本の会計的意味
資本(また負債)の内部的・調達的処理取引という内的要素に依存
機能的側面
企業外部に向けての、またそれに係る反面的・対応的処理
EX)
負債
満期の返済・償還、利子の支払等
株式資本の場合
株主・持分権者への配当支出、資本剰余金・利益剰余金等の予備的留保等
→債権者、出資者等の外部主体への経済的債務解消の取引処理
法概念上
負債・資本の勘定
「義務の体系」
義務体系の主体
「会計主体」が存在
資本金勘定の分立記帳
↓必然
義務体系内部に変容をもたらす
EX)「国家資本金」
義務体系に優越して「権利の主体」としての立場が強く表れる
→企業自主性の制約につながる
西方・株式・資本制度
資本金勘定
一つ一種
株主内部の優劣・力関係
「持ち株数」に比例して決定されるのが原則
株式会社
義務体系への権利体系の介入侵略は存在しない
中国・新会計制度における「権益」
本来的に権利体系の概念
義務体系のそれではない
↓株式会社の観点
大きな検討課題
<参考文献>
橋本喬「企業会計にける資本概念の日中比較」『経営研究』第7巻第1号、愛知学泉大学経営研究所、1993年9月