XBRL
XBRL(eXtensible Business
Reporting Language)
企業情報の発信や伝達、利用を、コンピュータ・ネットワーク上で効率的に行うことを可能とする
XBRLで始まる新たな時代
XBRL
企業の財務データを統一的な形で電子的にやりとりすることを可能にする
→企業の内部の人間はもとより、その企業と様々な形で関わっている外部の人々も、従来よりはるかに容易にかつ迅速に、企業の健康状態を把握できるようにする仕組み
財務情報のみならず、非財務情報も含めた企業情報全般の電子的処理を可能とする
企業情報革新はこれからが本番
EDINET
有価証券報告書など法定開示資料
TDnet
東京証券取引所の規則で上場企業に義務付けられたいる決算報告など
現状はアナログ時代
情報は電子化され、デジタルな信号として画面上に表示されるものの、そこから先の利用はアナログ情報としての処理をせざるをえない
デジタル時代の始まり
デジタルな情報のまま再利用できる標準的フォーマットで公開
XMLの財務情報への応用
XBML
XML(eXtensible Markup Language)という標準化されたコンピュータ言語技術を、財務情報の交換に応用したもの
SGML(Standard
Generalized Markup Language)
異なるシステム間で文書交換を可能とするための標準言語
HTML(HyperText Markup
Language)
SGMLをもとにインターネット上の表示のためだけに簡易化した規格
HTMLの段階
単に画面上に情報が提示されるだけ、という点でアナログの世界
XML
情報により豊かな意味を与えることにより、真にデジタルな処理を可能とするテクノロジー
XBMLで何が変わるのか
HTML
画面に表示されるだけ
目で見て手作業で利用するほかない
XBML
*表作成プログラムをコンピュータに組み込んでおけば
自動的にA社とB社のウェブサイトから、必要な情報を取り込み、リアルタイムで表にすることができる
日本はXBML先進国へ
国税の電子申告
申告書に添付される財務諸表をXBML形式で提出することができる
東京証券取引所に提出する決算短信の一部
XBMLで受け付けている
XMLとCSV、HTMLの違い
CSV(Comma Separated Values)形式
データをカンマで区切り、先頭から数えて何番目か、という順番でデータを識別する
こうしたフォーマットを理解できるソフトウェアの間でしか、データのやりとりはできない
データ項目に追加や変更があると、その度に出し手、受け手のシステムを変更しなければならない
XML
インターネットによるオープンなネットワーク環境のもとで、情報にタグをつけることで、より簡易で柔軟な情報のやりとりを可能としている
HTML
タグは、文字等をどう表現するかについてを指示する機能しかもっておらず、決められた種類のものが利用できるに過ぎない
XMLのタグ
情報の意味を自由に定義できる(eXtensible「拡張可能性がある」)
SGMLの複雑さを回避する一方、HTMLの制約に縛られない利便性を追及したもの
XMLを使用した情報交換の仕組みを業界ごと、用途ごとにネットワーク上の情報交換のための言語が作られつつある
XBML
XMLというメタ言語で定義された、財務情報利用者のためのXML応用言語
情報をネットワークで利用できる意義
インターネットの世界に利用可能な形で用意されている膨大なリソースから、取捨選択してくるものになる
EPRパッケージの導入
ERP(Enterprise Resource
Planning)
企業の経営資源を最適に管理するための考え方
経理管理、財務管理、会計業務、販売管理、物流・在庫管理、購買、人事・給与、生産管理、顧客管理といった、企業の各部署の情報をネットワークで相互に関連付け、効率的に管理しようというもの
ERPパッケージ(統合業務パッケージ)
各社が個々にERPのシステムを自社開発する代わりに、パッケージ商品として提供されているもの
EX)
SAP、ピープルソフト、オラクル、バーンなど
SCMの構築
SCM
部品メーカー、製造業社、卸売業者、小売業者、そして顧客に至るまでをネットワークで結び、一連の情報の流れを一貫して管理し、全体の効率性を向上させ、顧客に対する製品、サービスの付加価値を高めようという考え方
ERP
個々の企業内の営業、経理、製造等のネットワークによる統合
SCM
企業観のネットワークであり、清算、物流、在庫の効率管理のために利用される
ERPとXBMLを通じた経営革新
限定された財務情報中心のディスクロージャー
できるだけ投資家等と経営者の情報格差を縮小するという発想から、新たなディスクロージャーの姿を模索
1枚の伝票から
(1)財務情報の原点としての伝票
SCMとEPRがリンク
仕入れ、生産から消費にいたる物・サービスの効率化と、ここの企業内の資源配分最適化が同時に達成される
企業内における財務情報フローにもXBRLを使用
企業内の業務効率化、適正化にもつなげていく
企業の事務処理のレベルからXBRLを導入する
投資家向けのディスクロージャーのために、しょうがないから、XBRLを導入する
↓
企業の内部管理や経営戦略立案のためなど、企業自身にとっての財務データの有効活用も促進される
→従業員においても、「この一枚の伝票からディスクロージャーが始まる」という意識が浸透する
(2)業務システムと会計システムの統合
現状の会計処理用のソフトウェア
製品によって様式は様々
アウトプットをそのまま、取引先、銀行、投資化等の使う分析システムに連動させられるわけではない
経営者の内部管理、意思決定のためのソフトウェアとの互換性も保たれていない
社内業務システム自体をXBRL対応のものにしていくことが合理的
SAPなど
XBRLが採用されつつある
(3)XBRL GLの仕様
XBRL GL
企業内部の会計情報を扱うためのXBRL規約
勘定科目、仕訳データ、勘定残高等あらゆる会計・財務情報を表現し、それらのデータを異なるシステムやアプリケーションの間でやり取りする共通データ使用
XBRL GL
会計上同じ概念を持つ共通部分と地域・慣習などの違いによる拡張部分から構成
・共通部分(コア)
国や地域、業種に依存しない共通モジュール
2002年4月に正式承認
・拡張部分(アドオン)
国や機能、業種などに依存するモジュール
4種類のモジュールに分類
@Jurisdictional
add-on(地域別モジュール)
AFunctional
add-on(機能別モジュール)
BIndustry add-on(業種別モジュール)
COther add-on(その他のモジュール)
XBRL GL
財務報告に必要な詳細情報をもちながら、財務報告書の形式に関わらず、監査、予算立案などの目的にあった財務情報を表現できる
(4)XBRLによる総勘定元帳の作成
1枚の伝票から会計情報に至るXBRLの活用を、世界で初めて実現させた試み
ワコール
業務システムで入力され生成される情報が、会計システムのインプットとなっていくのであり、各種の業務システムの設計において、会計システムとの連動が意識されてしかるべき
↓
他の業務システムと会計システムでの二重入力
→結果として両システム間の数字で差異が生じてしまう
問題を解決するための一つの選択肢
ERPパッケージの導入
もう一つの選択肢
既存システムを生かしつつ、既存システムとERPパッケージをEAI(Enterprise Application Integration)で結ぶという手法
*EAI
企業内で業務に使用されている複数のコンピュータを有機的に連繋させ、データやプロセスの効率的な統合を図る仕組み
XBRL GLを使って業務システムと会計システムを連繋
極めて汎用性の高いXBRL GL自働仕訳システムを作成
仕入管理、売上管理、資材・購買管理、在庫管理、そして給与や旅費計算等の人事関連ワークフロー等、32の業務システムが出力したデータを、会計システムが理解できる勘定科目に変換
業務システムに変更が生じても、データの連繋部分の修正に手間をかける必要もない
子会社および関連会社の財務等のデータを総勘定元帳レベルで統合することで、関連会社管理の工場や財務資料の作成の効率化を図ることが可能となった
新システム導入の成果
@会計業務のスピードアップ
意思決定の迅速化
ディスクロージャーの迅速化
Aペーパーレス化と情報の共有
B経理部門のスリム化
(5)XBRLによる連結決算
専門商社
従来
子会社の会計データをエクセルシートで収集・管理
新システム
XBRLを使用して、子会社の会計システムとのデータ連携を実現することで、収集作業の迅速化・省力化・データ品質向上が実現
<参考文献>
淵田康之『XBML入門』日本経済新聞社、2003年