第3章 国際会計の諸概念
国際財務会計
(1)財務会計のグローバリゼーション
国際財務会計
企業の対外取引の拡大、外国金融・証券市場での資金調達の活発化、外国投資家等利害関係者の増大など財務会計のグローバリゼーションが進展する状況下で、従来の財務会計基準に重大な変容を迫り、また、新しく発生した会計上の諸問題を取り扱う領域
2つの問題領域
・財務会計基準を含む財務会計処制度の国際的調和化の問題
@会計基準の国際的調和化
国際証券市場で企業が開示する財務諸表情報の国際的比較可能性を高めるために、各国の財務会計基準の実質的際を狭め、調和化を計ろうとする努力
A開示情報の国際的調和化
情報利用者に開示される財務情報の内容もしくは範囲に関する国際的調和化の問題
ex.個別企業の財務情報重視型から企業集団の連結情報重視型へシフト
・外国企業の外貨建て取引にともなう為替換算処理の問題
外貨建て取引の円換算方法や為替差額の処理、在外視点および在外子会社等の財務諸表項目の換算処理を扱う領域
(2)時価評価の導入拡大
企業会計の基本課題〜適正な期間利益の測定
2種類の会計システム
・業績表示利益の測定構造
経済的意思決定のために有用な会計情報の開示を目的
・処分可能利益の測定構造
利害調整もしくは利益分配を公正に実施するために行われる会計情報の開示を目的
処分可能利益の測定
収益認識における実現主義と資産測定における取得原価主義によって支えられている
取得原価主義の見直し
(1)投資家等の意思決定情報として、企業の業績表示利益に関するより有用な会計情報の開示が求められていること
(2)公正な市場価格等をもつデリバティブ取引の増大により、それに関するディスクロージャーの充実が求められていること
(3)取得原価主義のもとで、企業資産の上に発生する含み損益を利用しての恣意的な利益操作を排除する会計基準が求められていること
(4)金融・証券市場の国際化が進展する状況の中で、会計基準の国際的調和化が重要な会計的課題となっており、それへの適切な対応が求められていること
(5)現行の会計実践が、すでに純粋な取得原価主義会計ではなく、無償取得資産の評価、外貨建取引等の換算基準、リース資産の資産計上など、特定の資産についての時価評価が組み込まれていること
対応
特定の資産項目について時価を導入
「緩和された原価主義会計」、「混合会計」
・FASB(1993年5月)
SFAS第115号
・IASC
IAS第39号
・企業会計審議会(1999年1月)
金融商品にかかる会計基準の公表
(3)連結情報重視のディスクロージャー
・FASB(1975年9月)
SFAS No.3「連結財務諸表」
・IASC(1978年6月)
IAS No.3「連結財務諸表」
・企業会計審議会(1975年6月)
「連結財務諸表原則」
↓諸点で遅れている
(1)個別財務諸表が主情報で、連結財務諸表が従情報であること
(2)連結財務諸表の体系に連結資金計算書が含まれていないこと
(3)連結の範囲が、議決権の所有割合に限定しているため、実質的支配下にある会社であっても除外されうること
(4)法人税等を期間配分することによって当期利益の適正な表示を確保する税効果会計が原則適用されていないこと
「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」(1997年6月)
連結情報(主)−個別情報(従)へ変更
(1)「営業の状況」「設備の状況」等の連結ベース記載
(2)事業種類別等のセグメント情報
(3)企業集団の構成状況に関する情報
(4)オフバランス情報、リスク情報等の連結ベースでの開示
(5)連結キャッシュ・フロー計算書の導入
(6)連結中間財務諸表の導入
(7)連結ベースでの臨時報告書の提出
(8)持ち株会社についてのディスクロージャーの充実
連結財務諸表原則の改定
支配力基準の導入、税効果会計の適用、親子会社観の会計処理の統一、資本連結手続の明確化など
<参考文献>
木下照嶽、中島照雄、柳田仁編著『文化会計学−国際会計の一展開−第2版』税務経理協会、平成14年6月