中国における企業形態
建国初期の社会主義化の過程(5種が併存)
大企業を中心に国有化された国営企業、私的資本との合弁である公私合営企業、私的資本の私営企業、集団所有の協同組合に四つ合作経営企業、個人所有・個人経営の手工業・焦点
1956年まで
国有・国営企業、協同商店を含む集団所有企業へと統合
*個人企業
手工業、零細商店などとして僅かに残ったに過ぎない
1978年における工業総生産額に占める割合
国有企業:77.6%
集団所有企業:22.4%
国有・国営企業
社会主義計画経済体制
機関産業部門を中心に大企業およびその関連企業が国有化
電力、交通、通信、銀行も政府の管理化
国有企業
中央政府(国務院)に始まり省・市・県にいたる地方政府の主管部局が所轄
産業別縦割り、地域別横割りという分野行政の形で経営に直接介入
企業は生産・経営・販売にほとんど自主権を持たなかった
地域の雇用確保、従業員の福利厚生、社会保障機能も課せられ、地域小社会を形成
1984年以降
分権・市場志向政策に基づき農業経営同様に請負経営責任制導入など国有企業の自主権拡大と非国有経済部門の発展が図られる
↓が、企業経営への行政介入の枠組みが依然として残される
経営責任が不明確
市場の動向に対応した経営ができない
→国有企業の赤字化は増大
国家補助金の規模も拡大
1992年10月:第14回党大会
社会主義市場経済体制が提起
1993年11月:13期3中全会
市場で自主的に活動する経済主体として企業を位置付ける企業制度改革
現代企業制度と法人財産権という新しい概念を導入
国有企業にも独立採算原則に基づく経営と資本・行政の分離が図られる
有限責任会社である株式会社と有限会社への転換
国家が全額出資者である場合と私的企業に一部資本参加する場合を認めるようになった
国有企業の経営合理化と効率化
企業集団形成が促進
1991年
大型企業集団100グループ結成方針
57グループを試点企業に認定
基幹産業を所轄する産業主管行政部門が主要企業を指定
自動車、機会などを主管する機械工業部関係が13社、電力6社、治金部と化学工業部がそれぞれ4社
1995年(国務院)
「企業集団の構成と管理についての暫定原則」
政府の経済発展戦略と産業政策に合致するとともに生産や輸出に重要な地位を占める大企業を親会社とする企業グループを企業集団
国有企業における資本と経営の分離の必要性
国有企業には計画経済体制に基づく政策的役割も課されており、経営方針決定が完全に市場経済論理で行なうことはできない
国有企業の赤字
市場経済化が加速する90年代に入ると増大
赤字の一端は計画経済による政策赤字であるとしても、一層の経営改善が課題
余剰人員の整理が社会問題
2001年3月:国家経済貿易委員会
2000年までの第9次5カ年計画期に国有企業の従業員数は7000万人から5000万人に減少
2001年からの第10次5カ年計画期にはさらに2000万人の削減を予定
経営規模拡大による国際競争力強化
国有企業間の統合・再編も進行
巨大企業の育成
海外市場での株式上場をも可能にする
設備資金調達に寄与する
国有である国有商業銀行の問題
建設、農業、中国、工商の四大国有商業銀行
全国の金融資産の7割を占める
政府に代わり国有企業の金庫番としての役割
国有企業の経営不振は銀行の不良債権増大を意味
2001年末での四大商業銀行の貸出総額7兆元のうち1兆7600億元が不良債権化している
25%に膨らんでいる不良債権比率
2005年までに債権回収強化などを通じて15%までに引き下げることが政府・人民銀行の方針
郷鎮企業
人民公社の解体、経営請負制と農産物の買い上げ価格の引上げ
増大した農家所得
郷鎮企業
かつての農村社隊企業が行政の末端機構である郷、鎮、村所有へと転換した集団所有制企業、農村が共同で経営する企業、個人が指摘に所有する企業が農村地帯に群生
労働集約的で、農村でニーズの高い製品とサービスを提供
都市工業や輸出工業の下請け機能
商工部門の企業
農林水産業よりも労働生産性は高い
農村に蓄積された資本と労働力を吸収
1980年
郷鎮企業数:142万社
就業員数:3000万人
総生産額:657億元
1998年…飛躍的増加
郷鎮企業数:2004万社
就業員数:1億2500万人
総生産額:9兆6694億元
郷鎮企業
農村の余剰労働力吸収に大きな役割
農業より所得の高い商工部門を抱える都市への人口流入を抑えた
農業よりも所得が高い副業としての就業が可能
郷鎮企業の分布密度が高い地域ほど農民所得が高い
市場経済化の進行
競争が激化
成長率は90年代になると落ちてきている
労働集約的な中小企業
資金力と技術力が劣る企業の生き残りが問題
経営面
下部行政機構の介入の余地が大きい
市場経済への適応性も問題
都市工業の下請け機能を持つ郷鎮企業
開放が進んだ沿海地域に集中
内陸部との所得格差拡大の一因
農村のみ開発で豊かな自然資源を活用
生産活動が拡大
→自然破壊と環境汚染の問題
外資系企業
外資の概念
対外借款、直接投資、その他に分類
1992年以前まで
対外借款が主体
1992年以降
直接投資の急増
外資導入の規模が拡大
外国政府・国際機関からの借款
低金利
返済期間も長い
主としてエネルギー、交通、通信、原材料工業、技術導入などの重点プロジェクトに使用
外国民間企業による直接投資(三形態)
外資との共同出資で設立する合資企業
出資比率にとらわれない契約型の合作企業
外資単独出資の独資企業
→三資企業
外資によるその他の投資
国際リース、補償貿易、加工貿易など
対中直接投資の業種分類
製造業が中心
これに不動産、サービス、商業・飲食業が続く
地域
開放が進んでいる沿海地域に集中
<参考文献>
賀耀敏、大西健夫編著『中国の経済』早稲田大学出版部、2002年6月、P33〜38