研究の課題
(1)金融システムの証券化の会計
1970年代以降の金融システムの証券化
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オフバランス取引の増加
・取得原価主義会計に基づいて作成された財務諸表
→オフバランス取引に伴う便益やリスクが開示されない
*オフバランス取引
取得原価主義会計を前提とすることによって発生・発展してきた非会計的取引
取得原価主義会計
・・・オフバランス取引の発生・発展を導く制度的温床
問題
@取得原価主義会計とは、そもそもどのような会計であるか
A取得原価主義会計がきわめて長期にわたって支配的会計実務の枠組みとしての地位を維持し続けてきたのは、そしてまた現在もなお、かかる地位を基本的に維持し続けているのは、一体いかなる理由によるものであるか
B問題の解決を図るためには、取得原価主義会計のどの部分を、どのように変革することが必要であり、また可能であるか
C問題の解決を図るために取得原価主義会計のある部分を変革した場合、それによって、当該会計の機能や利害関係者の利害にどのような影響が生じることになるか
取得原価主義会計の構造的特徴、制度的強固性
「原価評価・実現基準」「保守主義」
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用語の定型化された使用によって洞察の網の目からしばしば抜け落ちてしまっている、隠された「意味−力」
(2)会計の情報化と伝統的会計
意思決定有用性アプローチ(decision-usefulness
approach)の形成
会計(財務報告)の目的を「経済的意思決定を行う上で有用な情報を提供すること」に求める会計理論
会計の情報化
→会計理論および会計実務の意義をもっぱら情報の有用性に対する貢献のいかんに照らして評価しようとする傾向
→伝統的会計理論および伝統的会計実務の意義の著しい相対化の風潮
FASB概念フレームワークに伝統的会計理論および伝統的会計実務を意識した叙述
SFAC NO.5 par.50,par.51
SFAC NO.5 par.24,par.68
会計理論の拡張問題や会計観の転換問題
現実的には伝統的会計理論や伝統的会計実務の制約を離れては論じられない
(3)会計固有の問題領域としての測定
測定・・・会計固有の問題領域の最も中心に位置しているもの
@会計上の測定が、複式簿記システムという特殊な記録・計算システムを不可欠の前提としているということ
*A.C.Littleton「会計とは測定である」
A測定については、ほとんど例外なく、理論的な妥協や不整合を多分に含んだ議論を余儀なくされているということ
開示・・・あくまでも「副次的」なもの
開示の急速な整備・拡充の過程
→会計情報とはいえない情報が漸時、開示内容に取り込まれてきた
→会計とは難であり、何でありうるかを捉えにくくする主要な背景要因
<参考文献>
藤井秀樹『現代企業会計論』森山書店、1997年