グローバル・スタンダードを震かんさせたエンロン事件
2001年12月 エンロン(売上、全米7位)経営破たん
米国の会計検査院(General Accounting Office)の取り組み
1.破たんの経緯
エンロン
1985年設立(新興企業)
当初:天然ガスを扱っていた
1994年:電力自由化
→電力卸売市場に進出
1998年:インターネットを活用した電力・天然ガスなどの卸売取引市場を開設
→売上全体の約90%を生み出すまでに
純粋なエネルギー会社というより、多額の資金を動かして利益を出す金融会社の側面が強かった
2.指摘されている問題点
(1) 利益操作のため、連結対象外のデリバティブなどの金融取引を主体とする特別目的会社(SPE)を多数設立し、そことの間で粉飾決算を行っていた
(2) 破たん前の経営者の自社株(ストックオプション)の売却
(3) 従業員の退職基金の損失
(4) コーポレートガバナンス
(5) 監査法人
(6) 金融アナリスト
3.GAO報告書の要旨
「企業年金−エンロン破たん後に検討すべき重要な課題:PRIVATE PENSIONS-Key
Issues to Consider Following the Enron Collapse」(GAO-02-480T)
企業年金について検討すべき事項
@ 分散投資の重要性ならびに従業員教育
A 情報開示の重要な役割
B 従業員の年金資産を保護する受託ルールの重要性
4.確定拠出年金の改革の動き
2002年2月 401Kのプランの改革案
@ 従業員が401Kプランに加入して3年後には、拠出に対応する自社株を売却できるようにする
A 売却禁止期間中は一般従業員だけでなく経営陣の自社株売却も禁止する
B 雇用者が売却禁止期間を設定する場合、30日前までに予告する
C 雇用者が売却禁止期間中に従業員の利益になるように行動しなかった場合には、従業員の自社株投資資金に対して責任を負う
+α
@ 401Kプラン資産総額に占める自社株比率を制限し、プラン運用に対する従業員の発言権を拡大する
A 確定給付年金を従業員に提供するように雇用者に奨励する
B 年金プランを監視する社内委員会にプラン加入者の代表を参加させる
C 従業員の利益を保護するため401Kプランを保険にかける
D プラン管理者は、従業員に誤った投資情報を与えた経営者を従業員が訴えることができるように協力する
5.会計制度、情報開示、監査法人等の改革の動き
(1) SPE
(2) ストックオプション会計
(3) M&A会計
(4) コーポレートガバナンス
(5) 監査とMAS
6.日本への教訓
(1) 確定拠出年金
(2) コーポレートガバナンス(改正商法)
(3) 日本の監査基準
<参考文献>
牛嶋博久「グローバル・スタンダードを震かんさせたエンロン事件」『会計と監査』2002.6 全国会計職員協会、2002年6月