伝統的財務会計理論の再検討
T会計公準論・会計主体論の発展
1.会計公準論の発展と現状
会計公準論・・・会計理論の下部構造
公準論→会計原則論→会計手続論
会計公準
会計行為の技術的・計算制度的な枠とその基本的な目的または方向付けを示すもの
会計原則
会計公準に立脚して会計行為に対する一般的な指針を示すもの
会計手続
上部構造として、会計行為に対する具体的な方法または手法を示すもの
会計公準に関する諸学説の歴史的考察
1950年代までの公準論
ある特定の利害関係者を主眼とした企業会計または財務報告のための公準論
(1)主として債権者のための財政状態の把握という、貸借対照表目的の会計を重視する公準論
(2)主として投資者のための経営成績の把握という、損益計算書目的の会計を重視する公準論
1960年代以降における公準論
特定の利害関係者を対象とせずに、広く企業会計をめぐる各種の利害関係者を対象とした公準論
(1)各種の利害関係者の目的や利害から中立的な立場に立って経済事象そのものの会計的把握という、経済的実態の客観的な把握を重視する公準論
(2)各種利害関係者の目的や利害の内容を積極的に認識して、それぞれの利害関係者に対する広く、かつ、有益な会計情報の提供という、社会的・公共的な情報職能を強調する公準論
⇒会計公準論の歴史的な発展過程
企業会計そのものが社会的・経済的・法制的な環境条件の変化に即応して歴史的な可変性をもっていることを裏書している
会計の職能または役割も歴史的に変化してきている
1920年代の公準論(ペイトンの会計公準論)
現実に行われている企業会計の骨組みを経験的・帰納的にえがきだすことに主眼がおかれる
当時の会計実務をそのまま反映する形で会計公準論が打ち立てられる
貸借対照表中心の公準論が展開
1930年代
債権者目的、信用目的の会計公準論
↓
投資者目的または株式投資目的の会計公準論へ変化
・原因
会社は長期資金の調達手段として急速に株式を利用
→株式を中心とする証券資本制度の発達
貸借対照表中心(静態的理論)→損益計算書中心(動態的理論)
1940年
「会社会計基準序説」(ペイトン・リトルトン)
基礎概念論・・・取得原価主義を基調とした期間損益計算のための理論体系を確立するために展開
・「企業実態」、「事業活動の継続性」、「努力と成果」の基礎概念論
継続企業としての企業実態の経営活動を努力と成果という形でとらえて、これを期間的に対応させるという点
・「測定された対価」、「検証力ある客観的な証拠」の基礎概念論
期間損益計算の基礎となる原価、費用、収益などの数値を検証力のあるものとするためにその基礎数値を取引価格または価格総計に求めるという点
・「原価の凝着生」の基礎概念論
取引価格や価格総計に基づいて計上された各種の費用や原価が、経営活動の進行に伴って、期間原価や製品原価を構成するという点
1950年代までの会計公準論の発展段階
貸借対照表を中心とした公準論から損益計算書を中心とした公準論への発展
債権者保護目的の公準論から投資者保護目的の公準論への発展
1960年代
企業会計の外部環境を分析し、かつ、企業の経済事象をそのまま把握することを主張する会計公準論
AICPA会計調査研究所「第1号」
ザイン(実態)としての会計公準
会計をめぐる外部書環境の分析に基づく環境的公準
これから導き出された会計固有の領域内における付随的公準
ゾレン(あるべき)としての会計公準
当為的公準
会計の職能
(1)実態が保有している資源の測定機能
(2)持分の測定機能
(3)実態の保有している資源および持分の変動の測定機能
(4)これらの変動の期間的配分機能
(5)これらに関する貨幣的表現機能
「第1号」における公準論の特徴
@会計公準が会計の外部環境分析から直接帰納的に導き出されている点
A企業における経済財の現状および変化の測定に主眼を置いている点
B法律的・倫理的な会計施行や実用主義的な会計指向を排除している点
「第1号」における公準論
・特定の利害関係者保護という歴史的な制約から脱皮
・中立論的な公準論
・企業会計についての社会的な機能感や会計目的観が明らかにされていない
→環境的公準および付随的公準と当為的公準との理論的な「断絶観をいかんともしがたい」
*スパチェック
会計理論の健全な骨組みを作り上げるための必須の前提条件は、会計の目的とか目標をはっきりと決めることでなければならない
会計原則の基礎をなす唯一の基本的会計公準=公正性の公準
会計公準論の実質的な内容
会計の根本的な目標または目的とか会計の社会的職能を追及し、これらを明確にすること
・アーサー・アンダーセン会計事務所の公正性概念論
・イリノイ大学の公準論
・パッティロの公正性概念論
・AAAの有用性概念論