国際的会計概念フレームワークの構築−英国会計の概念フレームワークを中心として−
英国における会計の概念フレームワーク
『コーポレートレポート』(ASSC)
『マクモニーズ・レポート』(ICAS)
『ソロモンズ・レポート』(ICAEW)
『財務報告原則書』(ASB)
概念フレームワーク
主要な目的
多様な利害関係者に対して財務諸表作成・表示の概念的基礎・理論的枠組みあるいは共通の理解・判断を提供すること
現在の日本
個々の会計事象・問題に対して「場当たり的対応」
国内的調和にも障碍→日本版概念フレームワークの必要性
『財務報告原則書』
英国における先行研究(コーポレート・レポート、マクモニーズ・レポート、ソロモンズ・レポート)の精髄を抽出・継承している
概念フレームワーク(FASB)
首尾一貫した諸基準を導き、かつ財務会計と財務諸表の性質・機能・限界を規定する、相互に関連した目的と基本概念の整合的な会計、すなわち一種の「憲法」である
最大の特徴
将来の財務会計基準・実務の基礎となり、また現行の財務会計基準・実務を評価するための基礎として役立つような諸概念・諸関係を構築することにあり、特定項目・事実に関する会計処理基準・開示基準を設定するものではない(SFAC1,para.3)
主要な目的
具体的な個別基準を設定するのではなく、規則作成のために依拠できる概念的基礎の提供
会計基準・実務を展開するに際しての「メタ基準」(高次基準)
効用・特質(FASB)
(a)会計基準設定主体にとって指針となる
(b)公報された個別基準が存在しない場合、会計上の問題を解決するための準拠枠を提供する
(c)財務諸表を作成するにあたって判断の許容範囲を限定する
(d)財務諸表に対する財務諸表利用者の理解と信頼を高める
(e)比較可能性を高める
諸基準間の一貫性を確保するための明示的なフレームワークのもとで設定された会計基準
→比較可能性、標準化、信用性
↓
利用者の情報処理に際しての節約を促進
財務報告は「真実かつ公正」であることが確認(同じ状況に対して同じ成果を算出する会計基準)→信頼性を高める
概念フレームワークの史的考察
英国
会社法に詳細な会計規定を設けることなく、会計実践が取締役または会計人の判断に任されていた
1970年まで・・・全英的な会計基準が存在しなかった
ICAEWの『会計原則勧告書』が奨励的原則
→企業間の会計実務は多様かつ不統一
注(1) P11
↓
1969.12 ICAEW『1970年代の会計基準に関する意見書』
(a)会計実務に関する権威ある意見書を公表することによって、会計実務における差異と多様性をもつ諸領域を縮小する
(b)重要な項目の算定基礎を明らかにする
(c)設定された会計基準からの離脱を開示する
(d)新会計基準の草案を広範に公開する
会計基準運営委員会(ASSC)の設立(1970.1)
→会計基準委員会(ASC)(1976.2)
ASCの目的
会計処概念を定義し、会計実務に関する権威ある基準として『基準会計実務書』(SSAP)を作成すること
SSAP
・ピース・ミール方式により個々の会計問題ごとに切り離して取り扱った
・実務から機能する実用的アプローチによって作成
→SSAP間に首尾一貫性が欠如
根本的欠陥
会計報告書の目的に関する論議を行うことなく、会計基準を設定してきたこと
↓
公表財務報告書の範囲と目的を検討するディスカッション・ペーパー『コーポレート・レポート』(1975.7)
×会計人が現実に直面している解答を示すことを目的
○会社報告書に関する将来の論議を出発点として用意
基準設定に対する理論的アプローチを展開
「概念フレームワーク」の原点
『ワッツ・レポート(会計基準の設定:SAS)』(1981.1)
基準設定機関の構成・基準設定プロセスの改善等の提案とともに、将来の会計基準設定のための財務会計および財務報告に関する概念フレームワークの必要性の認識
主要提案
(a)会計基準設定機関の構成
(b)合同審査委員会の設置
(c)特殊業種のSSAPの公表
(d)基準設定プロセスの改善
(e)概念フレームワークの作成
(f)ASC運営のための資金確保
『マッキノン・レポート(基準設定プロセスの再検討(RSSP))(1983.7)
会計基準設定プロセスを再検討することが主目的
『ディアリング・レポート(会計基準の作成)』(1988.9)
会計基準の作成・公表権を有する会計基準審議会(ASB)の設置、会計基準の法的裏付けの強化、概念フレームワークの作成が主張
ASCの問題点
権威の欠如、方向性の欠如
概念フレームワークの作成
ICAEW
1987 ソロモンズに作成を依頼
『財務報告基準のためのガイドライン(ソロモンズ・レポート)』(1989.3)
ICAS
『会社報告書の改善(マクモニーズ・レポート)』(1988)
ASB
ASCのSSAPを承認・継承
『財務報告基準(FRS)』(1990)
『原則書』の公開草案、討議草案(1991〜94)
↓SP草案をまとめて
『財務報告原則所(SPER)』(1995,11)
修正SPER(1999.12)
<参考文献>
菊谷正人『国際的会計概念フレームワークの構築』同文館、2002年4月