社会科学としての会計の役割
現代社会が大きな転換期
環境要因の変化に対応して研究領域における理論的再構築が要請される
会計学が社会科学として存立する用件(自然科学との対比)
(1)研究対象が人間すなわち、動機付け、行動、関係という点で、おそらく最も複雑で予測できない(自然科学…秩序的、予測可能性)
(2)現象の非反復的、規則性の欠如(自然科学…反復性、規則性)
(3)観測および一般化の目的からみて、一種類の社会現象を文化環境全体から分離することの困難性、すなわち、実験するうえで制御不能もしくは予測可能な外部諸要素の変数が多すぎる
(4)制御可能な実験の欠如(データの不完全性、社会科学者以外のものによる規格)
(5)社会経済現象の多くが、直接的に観察もしくは測定することの不可能性(数学の不適要請、検証の不可能性)
(6)感情的偏見(社会科学者自身が、その一般的研究対象の一部となっている)
自然科学に対する社会科学の特質
研究対象の複雑性、反復性、規則性の欠如、社会現象を文化環境から分離することの困難性、測定上の諸問題等
ポスト市民社会における技術的変化の会計に対して与える影響
(1)余暇の増大と能力の向上による文化と生活スタイルの変化
(2)研究および知識ベース・技術の増大
(3)財務情報に限定されないで、目標達成のために有用なあらゆる情報の必要性
(4)政府と企業との共通目標への協働化
(5)意思決定の人的側面の重視
(6)環境情報の包摂、長期的発展性の評価
(7)会計学の経済学への依存性の低下
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産業構造の変化、生活の質の変化による定性的(非財務的)情報の重視、マクロ情報の必要性、組織構造における個人的側面の重視、組織の長期的維持・発展性、制度的諸改革、教育・研究の新しい秩序化等が重視
<参考文献>
青木脩、小川キヨシ、木下照嶽『社会発展と会計情報』中央経済社、1993年4月、P57〜58