会計制度の体系
(1)会計制度の歴史
社会主義会計
単式簿記制度、増減記帳法、資金平衡表、企業別・業種別会計報告制度の社会主義特有の会計制度を確立
会計は政府の計画経済と財政管理のための統計資料
政府が企業を種類別、業種別に監督管理するための道具
1978年から国内経済活性化と対外開放
企業の経営自主権を認める方向に転換
対外開放により外資を導入するにあたって西欧型の会計制度も導入する必要
1985年
会計法を制定
合弁企業の会計制度を制定
資本主義会計を取り入れる以前
国営企業、郷鎮企業、私営企業等の企業の所有形態別会計制度
業種別に40種類以上の業種別会計制度が存在
1992年7月
外資系企業の統一的な会計制度が実施
外国投資工業起業の実施細則
外国投資企業会計制度
外国投資企業財務管理規定
中国経済の市場経済化と対外開放
中国企業の会計制度
「国家資金の投入=運用」で表示される社会主義型の資金平衡表
↓
「資産=負債+資本」で表示される資本主義型の会計制度に変換
1992年12月
企業会計準則と企業財務通則
1993年7月
社会主義会計から資本主義会計への転換
中国の会計制度
約40種類あったものを13種類の会計制度と財務制度に集約
1992年5月:株式制実施企業会計制度
1993年12月:会計法
1993年当時の会計制度
一番上に会計法
会計法の下に企業会計準則(基本準則)と企業財務通則
企業会計準則の下に3種類の会計制度
中国企業の業種別会計制度
株式制実験企業会計制度
外国投資企業会計制度
企業財務制度
中国企業のための業種別財務管理規定
外国投資企業の財務管理規定
二則二制(2つの準則と2つの制度)
制定当初から両者に矛盾した規定
経済の更なる発展により、より深刻な矛盾
企業財務通則
固定資産の耐用年数、資産の廃棄基準、貸倒引当金の設定基準、棚卸資産の評価基準等の会社の会計方針を政府部門が個別に規定していくもの
企業の実態を適確に把握していない政府部門による会計方針
→自己矛盾を抱えながら企業の適切な会計処理を誤った方向にもっていく傾向
例)固定資産の耐用年数
経済的耐用年数ではないため、次第に経済実態と遊離する結果
例)固定資産の廃棄
政府機関の認可がなければ排気することができない
→資産性のない資産が累積される結果
例)売掛金・未収入金
資金的な切迫状態の中で回収が実質的に不可能なものであっても貸倒れ処理をすることができない
貸倒引当金も法定の僅かな引当率しか認められない
→不良債権が増大する結果
例)棚卸資産
簿価が原則的な評価基準
→市場価格が反映されずに長期滞留の不良資産が増大する結果
政府機関主導による企業財務準則とその管理規定
市場経済の発展により淘汰される関係
会計に重要なインパクトを与えた事象
国有企業が作成した財務諸表に虚偽記載
公認会計士が監査証明した投資基金、上場企業等の財務諸表や資産評価報告書に虚偽記載
→多数の投資家が損失を被った事件が多発
会計法:1999年10月改正、2000年7月施行
改正会計法
企業、会社の会計業務のみでなく、国家機関等の行政機関、社会団体、事業団台頭のすべての組織の会計業務全般を対象
→統一的な会計法に変更
特に顕著な規定
会計証憑、会計帳簿の改竄等による虚偽の財務諸表の作成に対する罰則とその防止手段の強化
内部監査制度、公認会計士制度、政府機関の会計監督機能が強化
企業財務会計報告条例(国務院):2000年6月発布、2001年1月施行
外部から資金を調達する企業と大中規模の企業
財務諸表の作成と対外的な発表についてこの条例の適用を受けなければならない
財務諸表の虚偽作成と改変、重要な会計事実の隠蔽に対して厳しく規定
財務諸表の真実性、監査の重要性、体外的な会計情報の真実性が強調
統一的な「企業会計制度」:2000年12月
2001年1月から暫定的に株式有限会社の範囲内で執行
2002年1月から外国投資企業も適用対象
将来的に有限公司、その他の中国企業も含めてすべての企業に適用
「企業会計制度」
中国企業の会計制度がはじめて統一
企業の業種別、所有制度別(国有企業、集団企業、私営企業等)、組織形態別(中国固有企業、有限会社、株式有限会社等)の相違はなくなる予定
大中企業に適用
小規模企業と経営上の特殊な状況を有する金融関連企業には適用されない
小規模企業
小規模企業会計制度が制定
金融関連企業
金融企業会計制度が制定
企業会計制度
企業会計準則の概念をほとんど網羅して採用
国際会計基準に準拠した会計制度
(2)企業会計準則と会計体系
企業会計準則:1992年公布
会計の原理原則が規定
具体的な会計処理基準
個別の具体会計準則で理解するしかない
具体会計準則
@ 関連当事者の関係とその取引の開示
A キャッシュ・フロー計算書
B 貸借対照表日後の事象(後発事象)
C 債務再編
D 収入
E 投資
F 工事契約
G 会計方針、会計評価の変更と会計上の錯誤の修正
H 非貨幣性取引
I 偶発事象
J 無形資産
K 借入費用
L リース
M 中間財務報告書
N 固定資産
O 棚卸資産
外資系企業に適用される具体会計準則
@ キャッシュ・フロー計算書
A 債務再編
B 会計方針等
C 非貨幣性取引
D 偶発事象
E 借入費用
F リース
<参考文献>
近藤義雄『中国現地法人の経営・会計・税務 第2版』中央経済社、2002年、P197〜202