マテシッチ会計学の世界
マテシッチ
会計学が科学として存立するための基礎研究を現代哲学に求め、公理体系化をはじめとする会計方法論を研究
マテシッチ会計学
(1)現代哲学の予備知識
科学観の常識の相対化
・支配的な科学観である検証主義や反証主義に基づく累積的進歩のビジョン
・科学的見解のパラダイム
異なる公理系を認め、同等の資格をもっている公理主義が展開されている
検証主義を標榜した「論理実証主義」(1920年代)
コントの実証哲学を起点とする実証主義
→経験的な事実の背後に何らかの超経験的実在(形而上学)を認めない
→プラグマティズム、操作主義、道具主義、行動主義、分析哲学
「反証可能性」(「反駁可能性」、「テスト可能性」)
ポパーの知識成長の過程
P1→TT1→EE→P2→TT2→EE→P3…
既存の理論の破綻から生じる「問題」→問題解決のための暫定理論の提示→批判による誤りの排除からよりい理論の選択→しかしその理論も完全ではないから、さらに新しい問題を生み出して、新しい理論の創出とそれへの批判が再び繰り返される→こうして「真理への接近」を目指し果てしない探求として続く
↑
クーン
「反駁と批判」の繰り返し
科学の特徴であるどころか、逆に科学以前の特徴
・通常科学(正常科学)
パラダイムを持ち、それに従って作業を進める
・異常
批判が連続するポパー的状態の科学
「科学革命」(Scientific
Revolutions)
一つの正常科学から別の正常科学へと移行する不連続な変動
(前科学→正常科学→危機→革命→新しい正常科学→新しい危機…)
・ポパー
科学しに通暁した哲学者
・クーン
哲学マインドを持った実証科学史家
制度
教科書化され、大衆化され、職業化することを意味する
反証主義、論理実証主義
社会科学ではあまりうまく説明がつかないのではないか
社会科学の世界
複数の理論が並存するのが常
→その状況は非科学的であるのかは疑問
ex)
ケインズ経済学と反ケインズ経済学が同時代に共存
↓
争点
科学的あるいは実証的レベルでなく、イデオロギー的レベル
双方の理論がそれぞれの防備帯を取り替える「反証のがれ」の術をもっている
リアリティ
仮説、演繹、帰結のつながりをトータルに検証し、さらにその判断として我々が保持している、時代の社会的背景によって変化する相対的なもの
社会科学者
自己の日常知をよりどころに、理論の全体像を絶えず評価しながら、試行錯誤して理論構築を図る
前提となる仮説や結論の対応関係は、日常知において納得されない限り、その理論が広い範囲に受容されることは出来ない
経済学の科学性や有効性
絶対的なものではなく、むしろその時代に棲む人々の「日常知の変遷」ではないか
(2)会計理論の基礎研究
「経験科学」
経験によって反駁可能な言明を取り扱う
・純粋な科学
物理学、化学
・純粋性を欠く
地理学、宇宙科学、社会科学
「応用科学」、「目的論的科学」…会計学
会計学の性質
倫理的・規範的側面をもつ応用科学
「実証的会計理論」
純粋科学の類推で構成されるがゆえに、応用科学に重要な「である」(Sein)から「すべきである」(Sollen)の世界への以降が解明できない方法
応用科学としての会計学
(1)それ自身の科学法則を持たず
(2)単なる科学的知識の獲得ではなく、達成すべき特定の目的をもっていて
(3)費用・便益の制約に従い
(4)会計学が独自の法則をもつ
会計理論の展開
@倫理的規範会計理論
A実務的規範会計理論
B条件付規範会計理論
*黄金の中庸を良しとする
<参考文献>
拓殖大学研究所『マテシッチ会計学の世界』1994年3月