会計の制度性および情報機能従属性
会計の制度性
ここで言う「制度」とは、経済的土台(基礎)の上に構築されている社会的秩序維持のための仕組みとなっている体系をいい、それは経済的基盤に奉仕し、経済的基盤の要請に応えることによって社会的秩序維持の機能を果している。すなわち、制度は経済的基盤の変化に対応して、その要請に応える形で内容が規定され、変化させられるのである。会計はこの意味での制度である。ここの実践がまとまった体系的な内容をもって一定の役割を果すとき、それは土台への奉仕として機能する。まとまった体系を持った実践は、法律や会計基準等の規範体系によって導かれるものであり、それらの規範体系は経済的土台の要請に応える形で形成されるのである。
外部への公表を目的とする会計
必ずしも常に企業の経済実態を忠実に反映するものではなく、公表される会計情報の情報機能に従属するもの
(1)法律と会計基準
我が国会計制度
成文法主義に立脚し、会計に対して法律と会計基準の二重の制約的規制をとっている
・法律
立法機関によって制定され、国家または公共の政策に従属し、強制力を持って実施される規範体系
・会計基準
会計観集の要約であると同時に、その時々の会計学における「一般的な理論」からみて妥当性をもった規範体系
拘束力に差異
商法第32条第2項(1971年)
「商業帳簿ノ作成ニ関スル規定ノ解釈ニ付テハ公正ナル会計慣行ヲ斟酌スベシ」
日本コッパース事件控訴審判決
「企業会計原則には、法的拘束力はないものというべきである」とし、「企業会計原則の全体が…商法32条2項の『公正ナル会計慣行』であるということはできない」と判示している
会計制度ならびに会計の「制度性」の典型
現実の会計は、現時点での「理論的妥当性」をもった社会的規範体系である会計基準とは矛盾した処理を受け入れざるを得ない
経済的土台の変化に対応して行われうるもの
(2)公表会計の情報従属性
法律が会計に規制を加える必要
会計
外部の利害関係人に対して企業の財政状態・経営成績を報告する手段
法律
外部の利害関係人相互間の利害を調節する必要(手段)
会計が利害調整の手段、ないし利害調整機能を有するがゆえに、法律が利害調整を目的として規制しようとするときに、会計に対して介入する
会計
競合する各種利害関係者の諸要求の間に立って、その中立性を維持することにより、実際的な力を得る
法律の会計への介入
「実体開示」機能に逆行した処理を公に認める結果
<参考文献>
鬼形功、嶋和重編著『企業と環境』税務経理協会、1999年10月、P186〜195