会社の財務計算
会社財務計算のよるべき法規
会社法第174条
「会社は、法律、行政法規および国務院財政、税務主管部門の規定に基づいて、会社の財務・会計制度を定めなければならない」
租税徴収管理法第13条
「生産・経営を営む納税義務者は、かかる財務・会計制度あるいは財務会計処理方法を税務機関に届け出なければならない。納税義務者の財務・会計制度あるいは財務・会計処理方法が国務院及び国務院財政、税務主管部門の納税に関する規定に抵触する場合、国務院及び国務院財政、税務主管部門の関係規定に従って納税を計算しなければならない」
中国に本店を置く会社・企業はもちろん、外資系企業にも適用
会社・企業に適用する財務・会計制度
統一化する必要
会社の資本
資本の部(所有者権益)
@払込資本金
出資者が有限責任会社の定款に基づき実際に払い込んだ資本金
株主が株式を引き受けて株式会社に実際に払い込んだ資本金
現金出資
会社の口座開設銀行に実際に入金された金額
現物出資
定款及び検収明細書に記載された金額
無形資産投資
定款及び検収明細書に記載された金額
既存の国有企業
外部から資本金を募集するほかに、元企業の資産が払込資本金の大部分を占める
公募により株式を発行
額面株だけ
→資本金と払込剰余金の区分は明確
券面額を一元とすることが原則
最低発行金額の規制はない
A資本積立金(資本準備金)
資本積立金
払込剰余金、受贈益剰余金、法定資産評価増額
払込剰余金
出資者が払い込んだ出資額が株式額面額を超えた差額
受贈益剰余金
会社が現金または現物の寄付を受けることにより増加した出資者の持分
法定資産評価増額
「企業財務通則」の規定に基づいて、原則として取得原価主義を実行
資産評価増額の原因
国有企業の資産使用権変更、または国有企業の株式会社への変更など
会社法第178条(資本積立金)
「株式会社は、本法の規定に基づき、株券の券面額を超えた発行価額で発行した超過額及び国務院財政主管部門が資本積立金に組み入れると規定したその他の収入は、会社の資本積立金に組み入れなければならない」
会社法第179条(会社の資本積立金の用途)
「会社の積立金は、会社の欠損の填補、会社の生産経営の拡大、あるいは会社の資本の増加のために用いる。株式会社が株主総会の決議を経て積立金を資本に組み入れる場合、株主が所持している株式の割合に応じて新株を割り当てるか、あるいは各券面額を増額する。ただし、法定積立金を資本に組み入れる場合、残された当該積立金が登録資本の25%より少なくてはならない。」
B利益積立金
当該年度の税引後の利潤を分配する場合
利潤の10%を会社の法定積立金として組み入れ、かつ5%ないし10%を会社の法定公益金として組み入れなければならない
会社の法定積立金の累計額
会社の登録資本の50%以上になった場合
新たに組み入れなくてもよい
法定積立金が前年度の会社の欠損の填補に充てるため不足する場合
法定積立金及び法定公益金を組み入れる前に、当年度の利潤を用いて先に欠損を填補しなければならない
C法定公益金
集団福祉基金と称せられ、税引後の利潤の5%から10%が会社に留保され集団福祉事業に用いられる
用途
主として従業員の住宅、会社の非生産施設
例)幼稚園、文化娯楽所、休養所
会社法第180条
「会社が組み入れた法定公益金は、会社の職員・労働者の集団の福祉に用いられるべきである」
税引後の収益
株主の権益になるはず
集団福祉基金として組み入れられた法定公益金は、従業員のために福祉施設の完備に用いられている
会社が破産を宣告された場合
当該集団福祉基金及び福祉施設が破産財産に入るか否かについては問題
株主総会が当該施設に対して、決定権をもつか否かも問題
D未分配利益
会社法第177条
「会社は、税引後の利潤の中から法定積立金を組み入れなければならない」「会社が欠損を填補し、及び積立金・法定公益金を組み入れた後の余剰利潤は、有限責任会社では社員の出資割合に応じて分配し、株式会社では株主の所持する株式の割合に応じて分配する」
会社の会計監査
会社の会計書類の合法性、真実性を保つため
法律をもって会社の会計監査制度を確立させる必要
会社の会計監査
会社の内部監査と外部監査の二重監査
(1)会社会計に対する内部監査
中国会社法の関係規定
内部監査は2方面に分けて行なわれる
1.監査役の会計監査の職責
会社法第124条、126条
監査役会を設ける
構成員は3人を下回ってはならない
株主代表と適当な比率の自社の職員・労働者の代表から構成
監査役会の権限
会社の財務に対する検査
会社法第128条
法律・行政法規及び定款に従い、忠実に監査の職責を履行しなければならない
毎決算期の会計諸表に対し、監査報告を作成し、株主総会に提出し審査を行なわせている
有限責任会社(会社法第52条)
経営規模が比較的大きい場合には、監査役会を設置し、監査役は会計検査を行なう
中国の会社法
監査役会の職責を履行するプロセス及び職責の内容について、原則的な規定を設けているだけ
具体的には規定していない
→実際上は
上場会社の決算期の会計財務諸表に対し、監査役会は一般的な方法により適正な検査を行なっている
2.株主及び社員の監督
有限責任会社(会社法第32条)
「株主は、株主総会の議事録及び会社の財務会計報告を検査・閲覧する権利を有する」
第176条第1項
「有限責任会社は、会社定款が規定する期限までに財務会計報告を各株主に送付しなければならない」
有限責任会社の社員
会社の財務状況を監督することができる
株式会社(会社法第176条第2項)
「株式会社の財務会計報告は、定時株主総会の開催の20日以前に、本社に備え置き、株主の閲覧に供さなければならない」
会社法第176条第3項
「公募により設立された株式会社はその財務会計報告を公告しなければならない」
→財務会計報告を本社に備え置くか、公告するという形式により、株主の監督を受けている
(2)会社会計に対する外部監査
会社法に基づき設立される有限責任会社、株式会社
すべて公認会計士の検証を受けなければならない
公認会計士の資格をもつ者
8万人程度
公認会計士事務所、審計士事務所
何千
会社法第175条第1項
各会計年度の終了時に財務会計報告を作成し、法に従って審査検証を受けなければならない
「審査検証」
公認会計士事務所と審計士事務所の行なう検証
法廷の会計に対する検証を正確かつ公正ならしめるため
公認会計士及び審計士の不正を処罰する規定も会社法の中に組み入れている
会社法第219条
「資産評価、出資検査あるいは検証を担当する機構が、虚偽の証明書類を提出した場合は、違法所得を没収し、違法所得の1倍以上5倍以下の科料を科し、かつ関係主管部門が法に従って当該機構の業務停止を明示、直接責任者の資格証明書を取り消すことができる。犯罪を構成する場合は法に従って刑事責任を追及する」
「資産評価、出資検査あるいは検証を担当する機構が、過失により重大な遺漏のある報告を提出した場合は、是正を命ずる。上場が重大な場合は、得た収入の1倍以上3倍以下の科料を科し、かつ関係部門が法に従って当該機構の業務停止を命じ、直接責任者の資格証明書を取り消すことができる」
中国公認会計士法第42条
公認会計士事務所は、法令に違反して依頼者及びその他の利害関係者に損失をもたらした場合、法により賠償責任を負わなければならない
<参考文献>
志村治美、奥島孝康編著『中国会社法入門』日本経済新聞社、1998年2月、P174,188〜190,193〜196