中国における証券取引
中国における証券取引
1980年代:模索段階
1990年代:国有企業の改革とともに、急ピッチな発展
2000年末
上海及び深セン両証券取引所
あわせて1,086社の株式が上場
市場価額の総額
中国GDPの53.4%に達している
両証券取引所
中国国民経済にとって極めて重要な資本市場としての役割を果たしている
中国における証券取引は曲折な変遷
いまだ多くの問題点
発足したばかりで不完全な市場
普遍的に存在する問題
中国特有の構造的な問題
証券取引の展開と取引の概観
中国における証券取引の展開(3つの段階)
第1段階(1984年〜1993年まで):模索段階
「株式制企業及び証券市場は資本主義と名付けるべきか、それとも社会主義と名付けるべきか」という激しい議論
1984年からいくつかの会社が株式を公開発行
1986年:上海
中国工商銀行上海市信託投資会社静安証券業務部において店頭取引
1988年:深セン
深セン経済特区証券会社において店頭取引
1990年11月26日:上海
上海証券取引所
1990年12月25日:深セン
深セン証券取引所
第1段階の特徴
証券市場が小規模であり国民経済に対して重要な存在にはなってない
上場会社や市場の主体をになう証券会社又は投資会社が上海や深センの会社がその大半を占める
→証券市場は地域的存在
証券市場に対する全国統一的な監督管理体制も整えられていない
第2段階(1993年〜1999年まで):飛躍的に発展する段階
国務院証券委員会、中国証券監督管理委員会及び各地方に証券管理公弁室が相次いで成立
→市場規模は急ピッチに増大しかつ中国全土にわたる資本市場となった
監督管理体制
国務院証券委員会
証券市場に関する専門管理機関
中国証券監督管理委員会
執行機関
証券管理公弁室
各地方政府の管轄下におかれる
→全国統一的な監督管理体制が初めて整えられた
1998年
国務院証券委員会が廃止されその権限は中国証券監督管理委員会に移譲
各地方の証券管理公弁室も中国証券監督管理委員会の管轄下に移される
→監督管理体制は一本化
市場規模の増大
1993年以降
上場会社の数は急ピッチで増加
1994年2月24日
上海証券取引所には11の株式新規銘柄が上場(1日の新規上場銘柄数の最高記録)
1996年及び1997年の2年間
両取引所で合計400以上の会社が新規上場
1999年末
国内上場会社の数は949社
証券経営機構も大きく発展
証券会社:101社
証券営業部:2,600箇所
証券従業者:10万人
公認会計士や弁護士の数も大きく増えた
全国各地方の会社が取引所に上場
証券会社も各地方に設立
取引所は小規模で地域的な存在から脱皮
中国全体規模の資本市場と化した
第3段階(2000年から現在まで)
未来に向けての新しい段階
目標:市場の健全化、国際化
上場会社や証券会社の経営の健全化(コーポレート・ガバナンス、独立取締役の立法化)
国際会計基準の導入など
取引の概観
証券取引所において取引されている証券の種類
株券(A株B株)
証券投資基金
債券
取引の状況(2000年末までの統計数字)
A株
両証券取引所では合計1,174銘柄(上海617銘柄、深セン557銘柄)が上場・取引
B株
合計114銘柄(上海56銘柄、深セン58銘柄)が上場・取引
上海証券取引所:米ドル
深セン証券取引所:香港ドル
株式
流通株と非流通株に区分
国家株の全部及び国有法人株の大部分
取引所では流通できない
取引所で売買取引
流通株だけ
上海証券取引所
流通株:上場会社全株式の33.5%
株式の取引売買:ほとんど個人投資家
1999年末に個人投資家の保有している株式市価総額:流通株市価総額の90%
個人投資家の多く
退職者、準失業者
職業的個人投資者:6.5%
証券投資基金(2000年末)
両取引所で合計10社の投資基金管理会社が管理している33銘柄の基金が取引売買されている
いずれもクローズ型
最近、オープン型投資基金が導入
債券
国際、社債及び転換社債
銘柄数は非常に少ない
深セン取引所
国債は16銘柄
社債と転換社債はあわせて5銘柄
<参考文献>
志村治美編著『東アジアの会社法―日・中・韓・越の現状と動向―』法律文化社、2003年、P153〜156