制度としての市場
市場行動の研究
経済学の主要テーマの一つ
市場の定義を経済学文献において見つけ出すことは容易ではない
市場に関する諸制度の分析的な考究は極めて稀
市場を定義する
とらえどころのない定義
市場(クールノー)
同一の財の価格の均等化が容易かつ迅速に達成されるほどの頻度で買い手と売り手が交渉をもっているような地域
市場(ジェヴォンズ)
密接な営業的関係をもち、何らかの商品の広範な取引をおこなっている人々の団体を意味する
→定義というよりは、市場に対するラフで出来合いの第一次的近似に過ぎない
市場(ルートヴィッヒ・フォン・ミーゼス『ヒューマン・アクション』)
生産手段の私的所有のもとでの分業の社会的システムである。…市場は場所でも、ものでも、集団単位でもない。市場は、分業のもとで協力しあっている様々な個人の行為の相互作用によって動かされる一つの過程である
市場(リチャード・リプシー)
買い手と売り手が明確に定義された商品の交換を交渉しあう領域
市場と制度
定義の長所
市場が常に「価格を設定し公表する」といった関連活動や顧客に接触し情報を伝える手段、さらに運搬の手段を包括していることの認識
定義の短所
あらゆる市場システムにとって中心的な、慣習的・法的・政治的・その他社会的な取り決めが無視されている
市場
組織化され制度化された交換
価格についての合意を調整・確立することを助け、またより一般的に、生産物、価格、数量、潜在的な買い手と売り手に関する情報を伝達することを助ける
市場と交換
市場的取引と非市場的取引の区別は大抵の経済学者にとっては、なお捉えどころのないままに止まっている
直接の理論的帰結のいくつか
市場
諸個人の取引の集合からなる自然的あるいは標準的な秩序
非市場的な制度
かなりの程度、異質で不自然なもの
市場
個人的で主観的な交換に導かれるエーテルのようなもの
あらゆる交換(とりわけ市場的交換)
制度的文脈のなかでおこなわれまた、制度文脈と作用しあっている
市場
個人的選択を表明するための市場の媒体
非市場的制度
本質的に「集団主義」的
<参考文献>
八木紀一郎、橋本昭一、家本博一、中矢俊博『現代制度派経済学宣言』名古屋大学出版会、1997年7月
P185〜191